恋が本気になるまで 9


だからってなにさ あんたがったどこさ
そんなことで騙されるものか ああ卑怯者

したがってゆうさ 言い訳ばっかりさ
そんなことがまかり通る今夜は ああ自棄起こそう

そんな俺たちのブルースが聞こえるかい



 俺は越前と話の途中で駆け出していた。
納得できないまま菊丸のためと別れを決意したがいつまでも気持ちを整理する事などできないでいた。そんな俺に舞い降りた”最後のチャンス”なのかもしれないそう気付いたら気持ちも身体も留める事ができないでいた。 
 『菊丸先輩がどうして別れを切り出したかわかりますか?』
 『不二先輩は菊丸先輩と同じ人を好きになったんです。』
越前が何故わざわざ俺にこんな事を言いに来たのかわからなかった。
越前は英二を好きなだと思っていたから・・・・・・・・それに不二が俺をだなんて考えられない事で。
菊丸英二は不二周助のために俺と・・・・・・・・・。
つまりまだ俺にはチャンスがあるのだろうか?英二本当のことを答えてくれ。
友情をとろうとする英二に言い知れない思いを感じつつ原因が乾でなかったことに心から安堵していた。



 「手塚?」
学園を出て暫らく行った公園の入り口まで着たところで誰かに声を掛けられた。
誰だまさか・・・・・・・・・・・・英二。
 「血相変えてどうしたの?」
その声の主は予想外の人物だった。
越前はここに英二がいるといっていたのだがまさかこのタイミングで不二と会うとは越前の言ったことを思い出してはっきり言えば今一番会いたくない人間だ。
 「不二、悪いが今急いでるんだ。」
そう告げ去ろうとする俺の腕を不二が掴んだ。
 「なんだ?」
 「行くの英二のところへ・・・・・・・・・・・。」
 「・・・・・・・・・・・・。」
 「行かないでよ。」
 「不二・・・・・何でそれを・・・・・。」
 「なんてね、そんなこといえる立場じゃない。用があったんだよね早くいきなよ。」
 ”なんてね”と呟く不二の表情を見ていたら越前のあの言葉は真実だったのだとわかった。わかったからといって俺には何する事もできない・・・・・・。
できない筈なのに俺はその場を動く事が出来なかった。
 「すまない。不二。」
俺の口が動く顔をあげて不二の表情をみる勇気もないのに・・・・・・・・・。
 「手塚が謝る事ないんじゃないかな。謝る事何かした?」
俯いたままの俺に不二は告げた。
 「・・・・・・・・・・・。」
 「早くいきなよ。急いでいるんでだろ。」
俺が黙ってると顔を上げた不二が少し微笑みながら言った。・・・・・・・・微笑みながら・・・・・・・・・・・。
 「・・・・・・・・そんな顔してる奴をほっとけるわけがないだろう。」
 「手塚、中途半端に優しくするのはかえって残酷だ。」
 「・・・・・・・・不二。」
俺はいつもいつでも不二を苦しめてきたのか英二もそれが苦しくて俺との別れを・・・・・・・・英二は辛いのか俺と時を重ねる事にもう辛さしか見出せないのか?
俺の思考はいつでも気付くと英二へと向いているそんな最低な奴なのに不二は好きだと言ってくれるのだろうか?
 「早く英二の所に行ってよ。」
 「・・・・・・・・・・・・・。行くことはできない。」
何をしてるんだ俺は・・・・。行って確かめなくてはいけないのに英二の気持ちをそれなのに・・・・・・・。
 「期待するんだ。それでもいいの。」
 「わからない。」
 「ずるいね。」
 「そうだな。」
俺は一言呟き無意識のうちに不二の背に手を回し引き寄せていた。
 「それでもいいんだ。今だけでも傍にいてほしい手塚・・・・・・・。」
俺は無言で頷いていた。


 
 「どういうことなんだ。」
 「大石、どうかした?ボーとして。」
 「いやなんでもないよ行こうか、タカさん。」



 『たとえ桃先輩でもあの人だけは傷つけさせないよ。』
 『それなら阻止してみるか、越前?』
 『桃先輩のしてる事がいかに非生産的で愚かな事か教えてあげますよ。』
 『越前、一つだけ・・・・人の思惑ってのはそう上手くいかないものなのさ。ああ、いかないね。』
 『桃先輩、ご馳走様。・・・・・・・だけど桃先輩もまだまだだね。』
 「あれは不二先輩と部長・・・越前、この勝負どうも俺の勝ちみたいだな。・・・・・・・・・・・英二先輩!何でここに?
ちょうど面子が揃ったか。見ものだね。」



 「英二には返さない。」
不二の本音が俺の心に突き刺さる。
本当にこれでいいのか?不二が傷ついても?後悔はしないのか?選択はあっているのか?英二をまだ愛している?
湧き上がる疑問の海の中一つだけ確実にこたえられる言葉があった。

 菊丸英二が俺のすべて。
 菊丸英二が手塚国光のすべて。
 すべて。
 全て。
 総て。
 統べて。

 「すまない。」
突如不二を引き剥がす俺。
自ら手を差し伸べておいて自ら手を引く。最低な俺、もう偽る事のできない心が溢れ出す。心は英二だけを求めている。
 「手塚・・・・・・・・・。」
不二の声に俺が顔をあげると不二の指がある一方を刺し示す。目を向けるとそこに英二が立っていた。

 そう英二が・・・・・・・・・・・・・・立っていた。

 「ごめん。邪魔したみたいだーね。ごめんごめん。」
誰かの口真似をして少しおどけて笑う英二の顔が酷く薄いと感じたのは俺の目の錯覚だったのだろうか?
 ・・・・・・・・英二は傷ついている。
 「英二。僕は手塚が本当に好きなんだ英二は許してくれる?」
英二の前に立った不二がそう告げた。その時俺は無言で立ち尽くしていた。
 「・・・・・・・・・・・・・・・。」
英二は無言で立ち尽くしその視線が俺に突き刺さる。



 何がどうしてこうなったんだ?
 俺が最初に求めていたものは一体なんだったのかもう思い出せずにいた。









手塚が本当に求めたものそれはなんだったのか?
そんな事どうでもよくなってきた。
 英二が傷ついているのにわかってて
何も出来ない手塚ふがいなさすぎ。
でもそれもいいところか?
王子の苦労は水の泡と消える・・・・・・・・。


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