恋が本気になるまで 7(空白の時) |
恋が本気であることに意味があるの? 恋が贋物であることに意味があるの? 読み物にラストがあるように 食事に食後があるように 恋も貫き通せば真になるから・・・・・・・・・ |
英二先輩が部活を早退した日から2日がたっていた。 あれから英二先輩は学校にも現れていない。 「桃ちょっといいか。」 乾先輩だった。 この所のハードな練習になにかと助言をもらっていたが突然のお呼びに今度は何を言われるのか一瞬身を硬くした。 俺は当然無視するわけにも行かず振り返った。 「なんすか。」 「腕の振り少し・・・・・・・・・・・・。」 俺的に特製汁だけは避けたいから乾先輩にはなるべく逆らわないようにしようと日頃から心がけている。 「桃城、それから英二に何を言った。」 「・・・・・・・・・・・・・・。」 話のついでのようにさらっと出た予想外の言葉。 まさか乾先輩からこの問がこようとは思いもしなかった俺は言葉に詰まってしまった。 「英二に不二のこと話したのは何故だ。」 何故乾先輩がその事を知っているのか・・・・・・。 乾先輩は読みが深い。誤魔化せはしないだろう、なら煙に巻くまでだ。 「・・・・・・・・・英二って・・・・・・・・・・。」 「エッ?」 「乾先輩、エージ先輩のこと英二って呼ぶっすね。二人が付き合ってたのは過去のことじゃないってことですか?丁度一年前ですよね・・。」 「そうか桃城に見られてたんだっけ・・・・・。」 「ええまあ。でも俺の覗き見に気付いてるとは思いませんでしたけど・・・。」 俺は乾先輩のこういう読めないところが苦手だった。何を考えているんだ? 「過去のことだよ。」 「そうは見えませんけど。」 大体あの時どうして上手くいかなかったのか俺は未だに不思議ですけど・・・。あんなに相思相愛だったのに。 「そう?俺にはいるんだけどな、もう違う人が・・・・。けど『別れても好きな人』って桃は知ってる?そういう人って本当にいるものなんだよ。」 「『焼け棒杭』っすか?」 「そんなんじゃないよ。ただ互いに互いの幸せを願ってるってだけだ。」 挑戦的な俺の言葉と態度をわかっていてあえて言い聞かせるように言葉と言葉をしっかりと選んで話す乾先輩。 「乾先輩。俺もそんな感じですよ。」 俺は思いがけず本心を口に出していた。乾先輩は何も言わず俺の真意を探っていたが先生に呼ばれその場を後にした。 しかしこの時俺と乾先輩の会話を立ち聞きしてる人がいたなんて俺は思いもしなかった。 俺は乾先輩と離れ一人でお前の背を見つめていた。 乾先輩が英二先輩を見守っていくように俺もお前・・・海堂をずっと見守っていたい。 海堂が愛する不二先輩の幸せを願うなら俺はその手助けをするまでだ。そんな俺の考えが愚かだと言うのなら俺は愚か者で結構だ。 海堂の幸せこそが俺の幸せとなるのだから・・・・・・・・・・・・。 「桃先輩。」 「オウ越前、帰るか。」 「聞きたいことがあるっす。」 「何だ改まって。」 いつものように自転車に越前を乗せ走り出すと突然改まったように越前が声をかけてきた。 「不二先輩は部長のことが好きなんっすよね。」 「・・・・・・・・・・・・。」 意外だった。 越前はそんな事興味がないと思っていたから・・・・・・。 思わず絶句してしまった。それでも越前はもともと予想していたのか構わずに話を続けた。 「けど部長は菊丸先輩と付き合っている。」 越前はそこで言葉を区切ると勿体付けた。いったい何が言いたいんだ。 「不二先輩と菊丸先輩は親友同士だけど不二先輩が部長を好きなの菊丸先輩は知らなかったんですよね。」 「・・・・さあ俺には・・・・・・・。」 俺は無表情で答えた。 「俺、見たっす。菊丸先輩に桃先輩が・・・・・・・・・・。」 「だから、・・・・・・・・・だから何。」 何が狙いだ越前! 「桃先輩、不二先輩が好きな訳じゃないのに不二先輩のためにやってるんでしょう。」 ・・・・・・・・・こいつは全部知ってる? 俺がどうしてエージ先輩にあんなことをしたのか知ってるって言うのか? 「・・・・・・・・・・・・・・・。」 「純愛っすか?」 断定的な言葉、全て知っているのに部分的に投げかけてくる質問、越前お前はやっぱり生意気な一年だ。 「純愛?!何言ってんだ越前!」 俺はわざと大声を出しとぼけてみた。 「トボケるんっすか?まあいいけどそれって屈折してますよ。」 お前に言われたくないなぁとふざけながら顔が強張っていくのがわかる。それでもおちゃらけた振りをする俺。 「越前なんか食ってくか?」 「桃先輩のおごりですか?」 「いいぜ。今月の小遣い入ったばっかだからな。」 自転車をこぐ足に力が入る。サドルを握る手にいつの間にか汗が・・・・・・・・。 「越前、何が狙いだ。」 ファーストフード店に入った俺たちは珍しく空いている店内の角に腰をおろし静かに問うてみた。 越前がはぐらかすならそれでこの話はおしまいにしよう。でも乗ってきたら俺も本気で答えてやろうと思った。 「狙い?」 「そうだなんか狙いがあるんじゃないのか?」 俺は正面から越前を見据えた。暫らく俺を見極めるように見ていた越前はハッキリした口調で言った。 「たとえ桃先輩でもあの人だけは傷つけさせないよ。」 「あの人?」 俺が疑問を口にしたのが意外だった越前は飲んでいたジュースを置き呟いた。 「桃先輩気付いてなかったんっすね。」 「何がだ?」 「俺が見てたのは英二先輩。」 エージ先輩?越前が・・・・・・・・・・・・・・・。意外といえば意外だがそうだといわれればこれ以上シックリ来るものもない気がしてくる。 「それなら阻止してみるか、越前?」 俺はわざと人の悪い笑みを浮かべ挑発的に言った。 「桃先輩のしてる事がいかに非生産的で愚かな事か教えてあげますよ。」 「越前、一つだけ・・・・人の思惑ってのはそう上手くいかないものなのさ。ああ、いかないね。」 越前は俺に一瞥するとお礼と共に生意気な一言を付け加えた。 「桃先輩、ご馳走様。・・・・・・・だけど桃先輩もまだまだだね。」 そう告げると越前はバックを掴み店内を後にした。 俺が告げた一言によりおそらく菊丸先輩は部長と別れるだろう。 その時不二先輩は一体どうするのだろう? お前・・・・海堂はどうするのだろう? そして俺は・・・・・・・・・・・・・・。 自らの手によって動き出した運命 しかし自らもまた歯車の一つでしかないのだ 愚かな本当に愚かな俺はこのとき自分の犯した過ちに気付いていなかった・・・・・・・。 |
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