恋が本気になるまで 2 |
本気にしてくれないから 冗談にしてみた 本気にしてくれないから 笑って済ませた 本気にしてくれないから 明るく振舞った 誰にもいえないから 喉に詰まったこの恋は僕を・・・・ 窒息させた |
英二の様子がおかしい。 僕だけが気付いた最初の変化は英二が手塚と目を合わせようとしないことだった。 英二が空元気に振舞えば振舞うほどみんなの目にはおかしく映る。英二に不自然な笑顔が似合わないのは一年でも知っている。 手塚の顔も自然と険しいものになっていた。 もう一つは英二が桃の動きを伺っている。 桃と英二は皆がくるより早く部室に来ていた。これは何を意味するのか?推理するのは簡単だった。 桃が英二に何かを吹き込んだ――。 それならと僕は桃に探りを入れてみたが特にぼろは出さなかった。 「英二。どうしたの?調子が悪いみたいだけど・・・・・。」 僕は英二に直接探りを入れてみた。桃よりも英二の方が単純だ。 英二は頭がいいそれは僕も知っているがそれとは違う意味で桃は頭がいい。悪い言い方をすれば桃はずるがしこい。英二は純真すぎる。 「ふ、不二!そんなに俺、調子悪そうに見えるかな。さっき乾にも言われたんだけど。」 「乾にも・・・?」 「そう乾にも言われた。」 「英二、具合でも悪いんじゃない。ホラ英二って熱だしても気付かないほうだし。」 僕はそう言って英二の額へ手をそっと伸ばした。 「そんなことないよ。」 「英二やっぱり少し熱いよ。無理は・・・・。」 僕がいうよりも早く後ろにいた手塚が英二の腕を掴んだ。 「保健室へ行くぞ。」 「いい!」 「・・・・?!・・・・。」 一瞬誰もが何が起こったのか判らなかった。 英二は否定の言葉を発し手塚の手を払いのけたのだ。 「えぃ・・・・・・・、菊丸?」 手塚も何が起こったの理解できないといったような困惑の表情を浮かべ(といっても微妙に眉が上下したとかなので普通の人にはわからにと思うけど)英二を見つめていた。 「いいよ。これぐらい一人で行けるから手塚は練習しててよ。」 英二は気まずい雰囲気の中手塚から目をそむけ、早口にまくし立てた。 「だが一人では・・・・・。」 「じゃあいぬ・・・・・・・・。」 「不二一緒に行ってくれ。」 英二は乾といおうとしていたが手塚はそれを遮るように僕へ言葉を投げかけた。 「ああ、うん行こうか英二。」 「・・・・・・・・・・・。」 僕が促すと英二は特に返事するでもなく下を向いたまま後をついてきた。手塚はしばし英二を見つめていたが小さくため息をつき練習に戻っていった。 「他は練習を続けろ。2年は・・・・・・・・・・・・・。」 「不二ごめんにゃ、練習中なのにつき合わせちゃって。」 英二は顔色があまり良くないのに無理しておどけているように見えた。 「いいよ。それより英二、大丈夫?」 親友でしょう無理して微笑んだりしないでよ。君が心配だよ・・・・・。 「うん平気にゃ。」 「そう?」 平気じゃないよ・・・・・・・・。 「うんへいきへいきのへのかっぱ〜。」 「無理は身体によくないよ。」 「ありがと、そうだよね。今日は早退しようかな・・・・・・・。」 「早退して家の人はいるの?」 「ああうん。今日は大姉がいるから。」 「それなら平気だね。でも帰るのは一人じゃ・・・僕が・・・・・。」 「俺が送って行こうか。」 僕と英二は驚き、声のする方へ振り返るとそこには乾が立っていた。 「「乾?!」」 「乾、練習は?」 僕はいきなりかけられた声に驚き少し頓珍漢な質問をしてしまった。乾はメガネのフレームをキュット押し上げながら僕の質問をさらっと流した。 「特製汁を作るつもりだったけど、いつでもつくれるからね。それより菊丸の方が辛そうだから、送っていくよ。」 「そうだね。」 僕も英二もうやうやしく返事した。 「それじゃあ、菊丸の荷物とってくるからそのまま待っててよ。」 「それぐらい自分で・・・・・・。」 「すぐくる。」 「あ、乾・・・・。」 「英二、乾も折角ああいってくれてるからお願いしたら。」 それから暫らくして乾は荷物を持って戻ってきた。僕は英二を乾に任せてコートへ戻ることにした。 「手塚。英二は具合悪そうだから大事を取って早退させたから。」 そう僕が告げると手塚は顔をしかめた。 「一人で帰ったのか。」 「え、いや乾が送っていってくれるって・・・・・。」 言うか言わないかの間に見る見る手塚の顔が険しいものになっていくのがわかった (といっても眉間の皺が増えるくらいのことなので普通の人にはわからないかも)。 「そうか。」 手塚は静かにそれだけ告げると練習中の皆の方へ目線を戻した。 「不二先輩。エージ先輩早退したんですか?」 ボーとしていた僕は後ろから突然かけられた声にすぐには反応できなかった。 「あ、ああ桃。そうだよ英二は乾が送っていった。」 「そうっすか。それにしてもずっと一緒にいたのに具合悪かったなんて俺全然気付かなかったスヨ。」 「桃が気にすることないよ。英二はいつも無理するから・・・・。」 「だから周りが気付いてやらなくてはあいつはそういう奴だ。」 手塚が静かに僕と桃へ発した言葉には僕達を諌めるというよりはすぐに気付いてやれなかった自分への後悔に聞こえた。 「手塚・・・・・・・・。」 「部長。」 「すまん別に攻めてるわけじゃない。」 「うんわかってる。手塚は英二が心配なだけだもんね。」 僕は少しからかい交じりのある声音で場の張り詰めた空気を断ち切ることにした。 「そうだ。」 手塚が意外にも頷いた。惚気られちゃったみたいだ。 手塚は一生僕の気持ちには気付かないだろう。それでもいい、それでもいいから側にいたかった。 誰よりも友人という立場でいいから手塚の一番近くにいられると思っていたのに親友である英二に恋人であり唯一の存在という位置を確立されてしまった。 手塚は英二にベタボレだ。意外なほどハマッテいる。 これは手塚にとっていい作用をもたらしている。それはわかっているのに近くでいると見えすぎて困ってしまう。 いい相談相手。隣がダメなのなら後ろで支えようそれが僕の立場その領域から決してでることはない、けどうらやましい英二。 「手塚。もう帰ったら?」 ポツリと呟いた僕の言葉に手塚は少し目を見張ったが次の瞬間軽く伏せて頷いた。 「・・・・・・・・・。そうさせてもらう。」 自分から言い出したクセに本当に帰っていこうとする手塚の後姿に僕は視線だけでもすがっていたのだろうか・・・・・・。 「その瞳、無意識っすか?」 「えっ?桃何かいった。」 「そンな瞳で部長のこと見てると部長穴があきますよ。」 「・・・・・・・・・。」 桃は知ってる? ひょっとして僕の気持ちに気付いている・・・・・・・・・・・・・。 「不二先輩?」 「そんな目してた?」 「ええこんなでっかい穴があきそうです。」 桃は少し不適に笑うとおどけたように手で丸を作った。一瞬真剣な心を一撃で射るような目をすぐに隠して・・・・・。 「そう・・・・・・・・・なるべく気をつけるよ。」 僕はそれだけいってその場を後にした。 |
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