恋が本気になるまで 3 |
チャンス到来 俺の心にちょっと余裕が出た 真っ白な貴方が 黒く見えた 灰色の空に 紅い光がともる時 手にした勝利が 空しく見えた |
「菊丸、もうすぐ家に着くけど大丈夫?」 俺は隣で俯き、静か過ぎる英二に不信げに声かけた。俺の声にハッとした英二は慌てて顔を上げ不自然な笑いで答えた。 「心配かけたかな皆にも・・・・。」 「手塚も心配してたよ。」 「乾!?」 英二は突然の思い人の話題にすっとんきょんな声を上げた。いつもなら赤くする顔を真っ青にさせて・・・・・・・・。 「菊丸?」 英二の様子のおかしさに俺は顔をしかめた。 今日は部活中ずっとおかしかった。 大石が話し掛ければボーとして聞いてない。 それだけなら寝不足か体調不良とも思うが河村とのラリーでボールを顔にぶつけたり、ボールの籠には躓くし、汁はしっかり飲み干した(?)。 最大の疑問は英二が一度も手塚を見ようとしないこと。 昼休みに手塚と一緒に中庭で食事をとっているのを見かけたのでそれまでは何もなかったはずだ。なのに放課後部活が始まってから英二だけ様子がおかしい。 イコール昼休みから部活までの時間に英二だけに何かがあったとしか思えない。 第一、手塚と喧嘩。 それはないだろう。さっきの手塚との一幕は英二が一方的に拒否したのだから。手塚は困惑した表情をしていた。 第二、手塚の浮気がばれた。 ないな。手塚は英二にベタボレだ。裏切るとは思えない。 第三、英二が浮気をした。 それもない。浮気しそうな相手がいないし、手塚同様英二もベタボレだからだ。 第四、推測だが何者かが不二の思い人を英二に教えた。 これが最有力で一番厄介だ。その鍵は不二。 英二は不二とも目をあわそうとしなかった。 不二自身はそのことに気付いてないだろうが英二は不二と目をあわさないようにして不二の視線の先を追っていた。 動体視力が部内一優れた英二には造作もないことだろう。そして視線の先が誰を捕らえているのかも簡単に分かったはずだ。 その事実を知った英二が今まで通りでいられる筈がない。 「菊丸。誰が誰を好きでも知らない振りをする。それが礼儀だよ。」 「・・・・!?」 英二は目を見開き俺を見つめた。顔色は依然悪い。 「菊丸が苦しむことはない。」 「でも俺・・・・・・・。」 「人が人を好きになるのに理由がいるの?そんなのないよ。だから誰が誰を好きになるのにも理由がないんだよ。」 「それでも俺は不二の親友でそれなのに気付かないで・・・・・・・。」 「逆なら、もし不二が手塚と付き合っていたら英二は不二に知らせるかい?」 「そんなこと言え・・・・・・・・。」 「同じだよ。不二だって心の中に秘めている。だから英二も見ない振りをしてあげてくれないか。せめて心の中でだけで思うだけだから許してあげなよ。」 これは俺自身へ言っている言葉。せめて心の中でだけでも君を思わせて欲しい。 「乾は優しいね。誰にでも優しい。そんな乾が好きだったけど昔の話だね。」 「そうだな。今はお互い違う人がいるから。」 「そうだよ!乾が俺を振ったんだからな。幸せにならなきゃ許さないよ。」 愚かな俺が犯した罪。今でも心を蝕む。 「菊丸ももちろん幸せだろ?」 「うん幸せ。ありがとう乾!」 その笑顔を守れるのは俺だけだと思っていた。 でも今は違う形だけど君を守っていけるから・・・・・・・。 「今までどおり不二と接することできるよな?」 「うん。多分できると思う。」 「じゃあ手塚とも。」 「うん。」 「よく出来ました。」 「あああ、また子ども扱いしてる。俺は乾と同い年なのに、乾が老けてるからだよ。」 「手塚の方が老けてる。」 「ぷ、クックックッ。そうだね。」 「俺も同い年だが・・・。」 「てづか!!!」 笑顔が輝くのを見た。俺には引き出すことの出来ない英二の笑顔に嫉妬しないと言ったら嘘になる。 手塚の真剣な瞳が物語る。本気の恋。 テニス以外でこんな表情をする手塚がいるなんて意外だが英二が絡むとままある。 「英二、大丈夫か?」 「大丈夫だよ。手塚!」 英二と呼ぶ手塚。それに答える眩しい笑顔の英二。 「手塚、菊丸も落ち着いたらどうだ。ここは公道だぞ俺は学校へ戻るから続きはお二人でどうぞ。」 場所もわきまえず抱きつきそうな勢いの二人に俺はワンクッションいれた。 「乾、今日はホントにありがとうね。」 俺は背中越しに片手を上げて去ることにした。 恋人たちの語らいは俺には刺激が強すぎるからね・・・・・・。 彼の笑顔が曇ることの無いように願うだけだ。 |
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