恋が本気になるまで 13 |
出来すぎた現実に吐き気がした 引き裂いたのは俺なのに罪悪感はない 作られた街に眩暈がした 悲しみにくれたあの人が瞳から離れない ああ 罪深き俺の所業は 罰せられた |
それぞれが辛くて苦しくて長い一週間は過ぎていく。 手塚部長はエージ先輩と別れ元には戻らず、不二先輩もまた友情という名の愚かな 感情を優先させた結果複雑な三角関係に突入した。 乾先輩は仮面の恋人と上手くいってるのに越前と共にエージ先輩が気になっている ようで、海堂は日常を演じてる不二先輩を見つめ苦悩していた。 例外的なのは大石、河村両先輩くらいなものだ。 俺もまた海堂を言い知れぬ思い出見つめている。 そして何故かエージ先輩から目が離せないでいた・・・・・・・・・・・・・・。 エージ先輩は日に日に痩せているように思えて誰もが心配げな瞳を向けているのに 本人だけが気付いていない。人の心配など無頓着に・・・・・・・・・・・。 酷い時にはあからさまに目を充血させてる時もあった。 けどあんたはいつも笑ってた。健気にひた隠すように笑っていた。 その微笑みが俺の心の病みを次第に溶かしていくとは考えもしなかった。 最初、俺はあんたを汚し貶め笑顔など出せないほど傷つけてやりたい。そのお綺麗 な魂をいっそ地獄へ落としてやりたいそう思っていた。 どうしようもなく病んだ俺の心に突き刺さったあんたの善意が気持ち悪かった。 反吐が出る。眩暈がする。嫌悪する。 俺に良心なんてない。そう海堂以外にはそんな感情持ち合わせていなかったはずな のに・・・・・・・・・・・・・・・・。 背徳的な響きと共にあんたの瞳に落ちた。 俺はいつしかあんた菊丸英二に憎しみにも似た愛情を感じるようになっていたん だ。 コレは罪あんたにあんな傷を負わせた罪。 それは罰あんたを愛するなんて皮肉にも似た罰。 罪と罰により俺の心が救われるなんて・・・とんだお笑い草だ。 俺は今海堂に恋し、菊丸英二を愛している。 海堂のためなら何でもできる。菊丸英二のためなら命をかけられる。 コレは恋で愛。 海堂の幸せを願い身を引くことが出来る。 菊丸英二の幸せなんてどうでもよくて、ただあんたを奪い尽くしたい。 それは恋と愛。 不二先輩を海堂のもとへ行かせるように仕向け、しかしあんたを俺のところへと留 まらせる方法・・・・・・・・・・・・。 厄介だね、ああ厄介だよ。 だけど俺には出来る。あんたを捕まえてやるよ。ああ捕まえてやるさ。 捕らえ放さない。鳥かごのように閉じ込め俺無しでは生きられないようにしたい。 コレは恋で愛、そして恋と愛の区別。 「エージ先輩。ちょっと話があるっすけど・・・・・・・・。」 部活の終了後、部室で人が引けたのを見計らって声かけた。 ここは舞台の整った蜘蛛の巣。今から俺は蝶を引っ掛ける。 「う?なに桃?」 エージ先輩は俺に無防備な笑顔を向けて頷いた。今から新たな罠を計る俺に警戒の 欠片もない、一転の曇りもない笑顔を向ける。 「すみませんでした。」 「何が?」 俺が急に深々と頭を下げたので面食らってつい聞きかえしたエージ先輩。 「・・・・・なんか俺の言葉がエージ先輩と部長の別れる原因になったような気が して・・・・今更ですけど申し訳なくて・・・・・・。」 「そんな事!桃が気にすることじゃないだろ!」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」 「それは俺たちの問題。桃は何にも悪くない!だからもうその事は気にしないのわ かった!」 「・・・・・・・・・・はい。でも・・・・・・・・・・・・・」 俺は迫真の演技で相手に緊迫感を与える。演じ続けて俺はこの現実を手にしていく それはいつか真実となるから・・・・・・・・・・・・。 「好きなんっす。」 「はっ?」 真の抜けた声ではぐらかすのは無しですよ。真剣な告白。真剣な眼差し。相手を追 い詰める。 もうすぐ王手。 「俺はエージ先輩が好きなんです。」 「・・・・・・・・・もも?」 「エージ先輩、俺と付き合ってください!」 勢いだけではだめだ。ただ我武者羅なだけでもだめ。ただ相手を思いやるだけなん てのも論外。越前お前のやり方じゃこの人は落ちない。 「好きなんです。タダの好きじゃない、愛してるんです。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」 「それもおかしなことにただの愛じゃないんですよ。俺はエージ先輩がいないと生 きていけないんです。」 こんなこと言ったら相手は退くか?恐れるか?答えは否。この人を落とすのは常識 じゃない。非日常を要する非常識さだ。 「何言ってんだよ?桃自分がいってることわかってる?」 「もちろんっすよ。」 「好きだって本気?俺の事が?」 「あたりまえっすよ。」 「俺でいいの?」 「もちろんッス。」 「本当に俺?」 「エージ先輩がいえエージ先輩じゃないとダメなんです。」 笑顔の裏にある醜い下心に気付かぬ天使は悪魔の餌食。 「恋人になっても俺・・・・・・・・・・・当分忘れられないかもしれないよ。」 天使が落ちた瞬間。それは堕天使となる。 神は歯軋りしてるかな?悪魔も天使が必要なんですよ。 だから優しき神様、悪魔を助けると思って天使をくださいよ。答えなんて関係なく もらうけどね。 「俺だけを好きになってくれる。桃?」 「先輩だけを愛してますよ。ずっと先輩だけを・・・・・・・。」 俺は天使を抱きしめた。天使の羽は今も揺れている。その心のように・・・・・・ ・・・・。 「桃が守ってくれる?」 「俺が先輩を大事に守って閉じ込めて俺の中だけにしまい込んで誰にも傷などつけ させません。」 「・・・・・・・・桃は他の人を誰も見ない?」 「先輩だけが必要なんです。」 コレは恋で愛、そして恋と愛の区別。 コレは恋で愛、そして恋と愛の区別。 コレは恋で愛、そして恋と愛の区別。 コレは恋で愛、そして恋と愛の区別。 それは甘く痺れる媚薬、あんたを深く奈落に落とし俺は始めて救われた。 それは光、あんたを暗き闇に引きずり込んで俺は始めて病みが止んだ。 それは幻、あんたを病ませ俺は始めて気が付いた。 あんたを深く愛している事に・・・・・・。 コレも愛の形。不器用で深く究極の愛の形。 「・・・・・・・・・・・英二。」 突然あいた部室のドアの向こうに不二先輩が立ちすくみ部長が固まっていた。 「て、手塚、不二!」 英二先輩が一際その目を大きくして俺を仰ぎ見る。 顔色を無くし見るも無残な表情。 俺は一人ほくそ笑んだ。 |
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