恋が本気になるまで 0.5(番外編)


密やかに進めた計画も終わりが近づく
上々の成果もなくただ過ぎた日々

今思えばそれすらが楽しき思い出

密やかな計画は密やかに消えていく
それは知られることもなく 黙殺された心



 「付き合って欲しい。」
突きつけられた現実がとても遠い昔のことのように思える。
 「俺でいいの。」
そんな可愛い目をして僕の親友は僕から大事な人を奪っていった。
 「好きだ。菊丸だけが。」
 「俺も手塚が好きだった。」
 「・・・・・だった。」
 「好き、大好きだよ。」
僕が見ていることにも気付かなくてそれほど互いしか見てなくて。いつからだろう彼の誰よりもそばにいるのは僕だと思っていたのにそれが変わってしまったのは・・・。
誰よりも大事な人なのに親友に取られてしまった彼。
たとえ思いは違ってもずっとそばにいさせて欲しかったのにそれなのに・・・・・・・・・。


僕は現実逃避から遠いい昔の事を思い出していた。


その日英二は突然電話で泊まらせてほしいと言った。
親友で同じ部活をしている英二が家へ泊まりに来る事は何回かあったけど何の前触れもなく突然やってきたのは初めてだった。
 「いらっしゃい。」
 「ごめんね不二。急だからお家の人にも迷惑だったよね。」
 「そんな事ないよ。うちの家族は皆英二が好きだから大歓迎。」
 「・・・ありがとう。」
僕の言葉にもいつもの笑顔が出なかった。英二が沈んでいるのは電話の時からなんとなく判っていたけどどうしてだろう?そう思いながら言葉にできなかった。
 「好きな人ができたって言われた。」
 「っえ?」
英二は瞳を暗くし俯き加減に呟いた。僕は咄嗟に何も言う事ができなかった。
 「・・・・・・・・・・・・・・・・。」
 「付き合いもないまま。終わっちゃった。」
 「それ今日言われたの?部活の後?」
 「・・・・・・・そう。乾が他に好きな人ができたからこの間の告白なかった事にしてくれって・・・・・・・・。」
今にも泣きそうな瞳が僕の上、ジッと一点を見つめる。僕はそれをただ見つめた。
 「好きだったのにな。」
瞳が堪えきれず一滴の涙を落とした。英二はそれを拭おうともせずに何もない空間を見つめ続けた。
 「・・・・・・・・・・・・・・・。」
 「友達でいられるかな。」
 「いられるよ。」
僕は気休めのような言葉を発した。こんな時自分がどうしようもなく嫌になる。

 「不二はさあ好きな人いないの?」
無言のままでいた英二は暫らくして口を開いた。それはいつも通りに見えた。
 「何、急に?」
 「なんとなく。」
 「悲しいの?」
 「ううん、悲しいのとはチョット違うかな。なんか無くなった感じかな。」
 「ナクナッタ?」
 「うん、何かが無くなっちゃった。」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
英二は本当に乾が好きだった。乾も英二が好きだった。なのにどうして上手くいかないんだろう?
こんなにも幸せそうでお似合いの二人はいないって思っていたのに・・・・・・・。
そんな二人でも上手くいかないのなら僕の恋など絶望的かもしれない。
だって僕の好きな人はこの親友が好きなんだもの・・・・・・・・。
二人が上手くいけば彼は親友を諦めそしたら僕にも少しは希望がって思ってたのに二人は始まることなく終わった。永遠に伝わる事の無い心を黙殺して二人は終わってしまった。
彼はこの親友に告白するだろうか?その時僕は絶えられるのかな。背筋が凍えた物凄い恐怖が襲ってきた。
取り残される孤独。伝わらない気持ち。黙殺された心。怖い、怖い、怖い。
近い将来のビジョンが僕に言い知れぬ恐怖を与えた。必ず訪れる未来。それを震えながら僕は待っていた。
何もできずに・・・・・・・・・・・・・。せずに・・・・・・・・・・・・・・・。


 「不二!」
 「なに、英二?」
 「聞いてくれる。」
 「だからなに?」
 「好きな人が出来たみたい。」
 「・・・・・・・・・・・、良かったね。」
 「うん!」
良かったね。
にっこり笑って言える時が来る事を望んでいる。
でも僕はまだ言えない。






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