僕らのアイドル! 5 |
星の降る夜は何を思って 踊ればいいのですか 月輝く今夜は何を思って 眠ればいいのですか 教えてください愚かな俺たちに どうか答えを下さい |
「今回のこの失態は何が原因なのか教えてくれるかい?」 「それは・・・・・・・・・すみません。僕が原因です。」 「君の?」 「はい、僕のマネージャーとしての責任です。」 「君には期待していたのに残念だ。」 「学園側は援助を打ち切るとそういうことですか?」 「その方が君のお父上も喜ぶだろう。」 「父は関係ありません。・・・・・・・・・・・・失礼します。」 「無断外泊してすいませんでした。」 「無断じゃないわよ不二君。観月君からちゃんと理由は聞いたから心配しないでね。」 人のよさそうな笑みを浮かべ寮の管理人は去っていった。だけど裕太にはその言葉の内容の方が驚いた。 「観月さんがどうして・・・・・・・・?」 ほうけていた裕太はハッと思い立ち観月の部屋へとかけて行った。 「観月さん?いますか?」 ガチャ 裕太はゆっくり扉が開くのをもどかしい気持ちで見つめていた。 「裕太君?帰ったのですか?」 「はい、すいませんでした。なんかお世話になったみたいで・・・・・・・・。」 「いいんですよ。大事な部員ですから・・・・・・。それに『裕太のことよろしく』と言われましたから。」 「!!!!!!!!」 やはり昨日のあの電話!騙された!そう思った瞬間裕太はもう二度と周助のことは信用しないと固く心に誓うのだった。しかし裕太よ、まだ信じていたのか・・・・・・・・・・・・。 「裕太君は幸せですね。」 「ええっ?観月さんそれってどういう意味ですか?」 騙された裕太にとっては観月が何をさして幸せと言っているのかさっぱりわからなかった。 「不二君はとても裕太君の事を思っていると言う事です。」 「???????????????????」 「そう、裕太君に言わなくてはいけないことがあるんです。」 「何ですか?」 今日の観月は何かがおかしいそう思いながらも聞き返す裕太。 裕太にとってその一言が大打撃を与える事になろうとはこの時は知るよしもなかった。 「僕は今日限りで学園を辞めます。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」 裕太は一瞬何を言われているのか理解できなかった。 「すみません突然で・・・・・・・・・。」 「な、バ、バカな・・・・・・・・・・・。どうしてそうなるんです?何がすまないんっすかさっぱり意味がわからないっすよ。」 「裕太君、今回ルドルフが負けた責任は取らないといけないんです。」 「それは観月さんだけのせいじゃないです。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」 「俺だって観月さんの言うこと無視したし・・・・・・・・。」 無言を通す観月に苛立ちが募る裕太。理由がわからない。どうしてなんでそればかりが頭の中をぐるぐると巡る。 「部活の皆は・・・・・・・・・・・・・何て言ってるんですか?」 「まだ話してません。」 「だったら話さないとそして皆で考えましょう。だから今日すぐ何ていわず・・・・・・考え直して下さい。」 「・・・・・・・・・・・・裕太君・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」 裕太は観月に叫んで部屋を飛び出していった。裕太だけでは観月を引き止めることは出来ないそれが判るから悲しくて辛くてそんなもてあます感情を自分の中でどう処理していいのかさえわからなかった。 「会いたい・・・・・・・・・・・・・・・。君に会いたいんです・・・・・・・・・・・・。」 裕太の言葉が突き刺さり苦しくてそれなのに観月は以前”君”に言われた一言が重なって涙が止まらなかった。 ――『やり直せばいいじゃないか』 「助けてください・・・・・・・・・・・・・・・。どうにかなってしまいそうだ。助けて・・・・・・・・。」 「裕太じゃないか!」 寮を飛び出しあてもなく走っていた裕太は部の先輩である木更津淳と柳沢慎也にぶつかりそうになった。 「・・・・・・・木更津先輩、柳沢先輩。」 「裕太どうしただーね?!」 「裕太・・・泣いてるのか?」 二人の顔を見てホッとした裕太の頬から自然と流れ出した涙に木更津と柳沢は顔を見合わせた。 「・・・・・・・・・・・・・・・観月さんが・・・・・・・・・・・・・・・・・。」 「観月?」 「観月さんが学園を辞めるって・・・・・・・・・・・・・・・・。」 「えっ?何でだーね!どうしてだーね!」 「どういうことなんだ裕太?」 柳沢が驚きの声を上げると木更津はその冷静さで裕太を落ち着かせ事情を聞いた。 裕太は一呼吸つくと今しがた観月から聞いたことを話し出した。 苦しくて、苦しくて、もがき苦しんでそれでも出口など見えなくていつの間にか同じところでグルグルしていた。 心が悲鳴を上げ、気体という重圧が僕にまとわりついてきた。 雁字搦めで歪んでいく精神が脆く崩れても何かにしがみ付いていた。 歪んだ精神の崩壊。その先の不安。 誰か助けて・・・・・・・呼吸ができない。 もっと楽に呼吸をさせて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・誰か助けて・・・・・・。 橙色の太陽が僕を包んで導く、もっと愚かになってもいいんだと教えてくれた。 あの光が僕を軽くそして高みへと上らせてくれた。 あの時君の光が僕に降り注いでくれた事の幸福。 やり直せるんだとやり直せないものなどないのだと教えてくれた。 答えは一つじゃない。 君と出会えた奇跡。君と出逢わせてくれた奇跡。 足掻いてそして道を模索していく正しいと信じた道をそれは誰のものでもない僕だけの道を・・・・・・・・・・・・・・。 信じて進め、己を信じて進め。 それが僕の軌跡で君と僕の奇跡。 不動峰テニスコート。 「深司、どうした。もっと深くいけ。」 伊武と神尾のラリーを暫らく黙って見ていた橘は一息ついたところで話し掛けた。 しかし橘の話を遮るように伊武が動きを止めた。伊武の動きが止まったので神尾が視線の先へ目を向けるとそこに観月が立っていたので驚き声を上げた。 「橘さん・・・・・・・・あれは・・・・・・・・・・・・・・・・・。」 「聖ルドルフの・・・・・・・・・・・?」 「観月はじめです。橘君、少しお時間よろしいですか?」 「あ、ああ?」 観月の唐突な申し出に不動峰テニス部員は全員面食らっていた。橘は頷くと部員たちに自主練と残し観月とコートを後にし水飲み場へ向かった。 「深司、偵察かな?」 「さあ。」 神尾の問いに気のない台詞で返したのにずっとそっちばかりを見つめている伊武が妙に可笑しくなる神尾だった。 「話しは?」 「さあ・・・・・・・・・・・何でしょう・・・・・・・・・・。」 「冗談に付き合ってる暇はないんだ。」 観月の言葉に顔を顰め答える橘は背を向けコートに戻ろうとした。 「待ってください。」 「なんだ用件なら手短に・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」 観月の呼びかけに少しイラつきながら橘が振り返るとそこには思いもかけない観月の顔があり言葉をなくした。 「すみません。何から話していいのか・・・・・・・・・・・・・。」 「何故泣いているんだ?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」 「・・・・・・・・・・・・・・・、橘君に会いたかったんです。そうすればきっと答がみつかるような気がして・・・・・・・・・。」 「答?」 「苦しい時に君の言葉に助けられました。きっと今までで一番楽に呼吸できた瞬間だったと思います。」 「・・・・・・・・・・・・・・。」 突然現れた観月の言葉は橘にとっては当然何の事だかわからないのでただ聞くことしかできなかった。いやたとえ橘が事情をわかっていてもきっと聞くことしかできなかっただろう。今観月が話していることは結局自分でふんぎるしかない事だったから・・・・・・・・・・・・。 観月もそれは分っていた。分っていたが橘に会いたかったのだ。 しばし二人は無言で立ち尽くした。 「満足か?」 気は済んだのか?橘はそういう意味をこめて聞き返したが観月にもわからなかった。 ただ・・・・・・・・暖かかった。心が暖かかくなっていた。 「答なんて期待してなかったんだろ?」 「・・・・・・・・・・・・そうですね。きっと会いたかっただけです。」 「俺の顔を見るくらいで気が済むならいくらでも見てけばいい。」 「いいんですか?そんなこと言うとまた来てしまいますよ。」 「いい。」 橘の言葉がまた心に染みた。そしてそこから温度を増していく、暖かく、暖かく温もりが積もり前向きになれた。 「一瞬でした。それであなたに落ちました。」 「?!」 橘は観月の突然の告白に驚いた。今まではちょっとした憧れと尊敬と友情の延長だと思っていたからだ。 「救ってくれた。心を・・・・・・・・・・・一目ぼれです。」 「・・・・・・・・・・・・・。」 なんと言っていいのかわからず橘は立ち尽くした。 「好きだと思いました。・・・・・・・・・・ただそれだけです。答は期待していません。」 「・・・・。」 「聞いてくれてありがとう。練習に戻ってください。」 「・・・・・・・・・・・・観月、はじめ。すまないが俺はその・・・・・・・・・・・・・。」 「いいんです。気にしないで下さい。聞いて欲しかっただけですから。」 そう告げすっと静かに去っていく観月の背を橘はいつまでも見送っていた。 「観月。」 「!?、赤澤どうしてここに・・・・・・・・・・・・・。」 観月が不動峰の校門を出たところで誰かに呼ばれ振り返るとそこには赤澤が立っていた。 「裕太に聞いた。・・・・・・・・・それでここだと思った。」 「知ってたんですか?」 「橘の事か?・・・青学戦の直後に橘と会っただろそのときのお前泣きそうな顔して聞いてたし、少し感じが変わったのそれからだったから・・・・・・・・・・・・。」 「そんなことで・・たったそれだけで覚えていたんですか?」 「ずっと好きだったからな・・・。執念深いんだろバカ澤だからそれぐらいしか取り得なくてさ。ただバカみたいにみてるぐらいしか出来ないから。」 「本当にバカ澤ですね・・。」 「だろ。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」 観月には赤澤の優しさが染みた。橘のお陰で心が温かくて温もりで一杯だったのに赤澤の優しさが乾いた大地に降り注ぐ雨みたいに染みた。 「人の欲に限りはないのですね。」 「そうだよ。だから観月ももっと欲しいものは欲しいって言っていんだ。悩みも人一倍抱えて欲しいものも言わないで・・・もっと言えよ。悩みも欲も皆聞いてくれる、観月の言葉なら聞いてくれるさ・・・・・・・・。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」 「何が欲しい?何が苦しい?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・学園に居たいんです。テニスから離れたくなし学園からも離れたくない!」 「じゃあそうしよう、観月。」 「・・・・・・・木更津!裕太君!柳沢!」 「観月、学園長に言われたんだろ。この間の試合の事で、でもそれは観月だけのせいじゃない。だからどうしたらいいか皆で考えよう。」 「そうだーね。観月、水臭いだーね。」 「そうっすよ。観月さん、俺たち頼りないかもしれないけど観月さんだけ責任取るなんておかしいですよ。」 「一緒に行こう、観月。そして皆で考えよう、な。」 「・・・・・・・・・・・・・・・しょうがないですね。皆がそこまで言うのなら戻ってあげますよ。」 泣き笑いのような観月の表情にホッとしたメンバーも笑顔になっていた。 「それでこそ観月らしい。」 「そうだーね。しおらしい観月なんて似合わないだーね。」 口々に言う皆がこんなに必要だと感じた事はなかった。観月に必要だったものそれは理解し信頼し合える友。 「ちょっと待っててください。」 学園に帰ろうとした観月達は橘が立っている事に気付き、観月は皆に声をかけてから離れ橘のところへ行った。 「良かったな。また一からはじめられるじゃないか。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ありがとう。」 「俺は何もしてないけどな。」 「いえ、そんな事ないです。ありがとう。」 観月はさっきまでと違い妙にすがすがしい表情でそう告げるとすっと手を差し出した。橘は笑顔でその手を握り返した。 「今度は試合で・・・・・・・・・・・・・・・。」 「ああ、聖ルドルフ。強敵だな。コンソレーションがんばれよ。」 「ええ。」 |
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