僕らのアイドル! 4


残酷な貴方 皆はこの笑顔に騙されるの
愚かな俺達 この人の手で踊らされてるの

教えてください神様 人が人を操れるなら
いつか太陽が 手に落ちるまで 導いて・・・・・



 「観月。なんか裕太が帰って来てないらしんだけど知ってる?」
木更津が観月の部屋に顔を出したのは9時を少し回った時だった。
 「え?そうなんですか?確か家のほうへ忘れ物したので取りに帰るとか言ってましたが・・・まだ帰ってないんですか?」
観月の言葉に木更津は一回頷き言葉を続けた。
 「今日の点呼当番が困ってたよ。管理人さんに報告できないって・・・。」
 「そうですか・・・・・・・・・・・・。判りましたちょっと電話してみます。」
 「そうしてくれると助かるよ。」
そう言って木更津は自室へと戻っていった。観月はすぐさまテレカと手帳を持つと寮に唯一ある電話へと向かった。

 「そうそうそれでな。そうなんだよバカだろ、あはははは。」
 ガチャ
 「へッ?」
電話を楽しんでいた男子寮生の通話は強制的に遮断された。
ある人物によって・・・・・。
 「誰だ今話し・・・・・・・・・・・・・って観月さん!」
 「すみませんが急用なもので電話貸して貰います。」
 「あ、は、はい。」
観月の笑顔と敬語に男子寮生は恐れおののき去っていった。恐るべき観月の女帝伝説は寮にもいきづいていた・・・・。
観月は手帳を出し不二家(ふじやではありませんふじけです)へ電話した。
 「はい不二です。」
電話に出たのは若い女性だった。恐らく由美子姉さんだろう。
 「夜分にすみませんが私は不二君と同じテニス部の観月と申します。」
そこまで台詞で観月は失態を犯していた。”同じルドルフ学園の”と”裕太の”という言葉を抜かしたばっかりに電話に出たお姉さんは周助へだと誤解したのだ。それと裕太には今だかつて友人から電話がかかってきた事が無かったのも理由としてあげられるのだろう。
 「周助ね。ちょっと待ってて。」
 「え、ちょ、ちょっと待ってください。」
不二家の保留音の前に観月の焦りの声も虚しく響いた。
 「このまま切ってしまいましょうか・・・・・・・・・・・。いえ、名前を名乗ったのですから気付きますよ。きっと・・・・・。」


 その頃、不二家では―――――
 「周助、電話よ。」
 「え、誰かな?」
 「えっと、始めて聞いた名前だったような。そう確かぁ?女の子みたいな名前で・・・・・・・・。」
――女みたいな名前・・・・・・・・・。英二?違う。国光?絶対違う!!貞治?秀一郎?隆?武?薫?海堂薫!だけど海堂がなんのようだ?
 「薫?」
 「なんか違うようなぁ?」
――誰だろう?・・・・・・・・・・・・・・・!アレかな?
 「ひょっとして観月。」
 「そうそう、ミズキちゃん!」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・男ですよ、姉さん。」
――それにしても観月が僕に何のようなんだ?


 この姉さんの勘違いにより観月は窮地に立たされることになる。


通話、ルドルフの場合。
 『電話変わりました。』
受話器から聞こえてきた声を聞いた瞬間、観月はその場に固まってしまった。それは紛れも無く不二周助の声だったからだ。
 「夜分にすみません観月ですが不二君。裕太君はご在宅ですか?」
 『観月。裕太に用だったの?』
 「そうです。裕太君に変わってもらうつもりだったのですがどうやら不二君に繋いでいただいたようですね・・・・・・・。」
 『裕太は今風呂に入ってるけど。』
 「えっ?今日はもう寮へ戻らないのですか?」
 『そうみたいだね。』
 「裕太君とお話したいのですが・・・・・寮生が困ってまして・・・・。」
 『他の寮生に泣きつかれたのかい?』
その通りだが何でわざわざ不二周助に言い当てられなくてはいけないのか?そんな言葉が観月を支配し突っぱねさせた。
 「不二君には関係ないことだと思いますけど。」
 『いずれにしろ観月。今日は裕太は寮には戻らないみたいだよ。』
 「そうですか、それならそれでいいんです。失礼します。」
 『観月。』
 「何ですか?」
観月は早く切りたくてつっけんどんに返した。周助は気にすることなく続ける。
 『君を変えたのは一体誰?』
 「エッ?何を・・・・・・・。」
 『裕太のことよろしく。』
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
自分がしたように唐突に通話を遮断され呆然とする観月だった。


通話後、不二家の場合。
 「誰からだ。」
唐突に話を切った電話の横で裕太が鬼の形相をして周助を睨んでいた。
 「別に。」
 「もしかして観月さんじゃ?」
 「違うけど?どうして観月が家へ電話してくるの?」
惚ける周助に裕太は胡散臭そうな眼差しを向けたがいつもの周助の読めない笑顔にハアッーと大きく一つため息をついた。
 「どうでもいいけど俺もう寮に戻るから。」

 「戻っても鍵、開いてないと思うよ。」

 「はあ?どういう意味だよ?」
周助の言葉に裕太はまた凶悪顔になった。
 「だって帰んないと思ったから電話しといた。」
 「えええええええええええええええええええ。じゃあやっぱりさっきの観月さん。」
 「違うよ。観月じゃなくてあのだーねの人。」
しれっとした顔して嘘を付く周助。
 「柳沢先輩?」
ころっと騙される裕太。何故こんなに兄弟で違うのだろう?
 「そうそう。あの人大丈夫?桃が心配してたよ。」
 「ああ、全然ピンピンしてたよ。って桃城の奴はいつの間にレギュラーになりやがったんだ。」
裕太は話題を変えられたことにまったく気付かず桃の話に驀進していく。
 「そうか裕太は桃と1年のとき同じクラスだったんだっけ?」
 「あんな奴がレギュラーになるようじゃ青学もやばいんじゃないか?」
裕太が青学のことを悪く言うのをまるっきり無視して話をかえる周助。
 「それより裕太、英二が寂しがってたよ。裕太と会えなくて。」
 「えっ?英二さんが?」
ホントに?と続ける裕太、ちょっと反応を示した。裕太は昔から英二に弱かった。
 「大体、あんなにいい人が兄貴の友人やってる事じたい不思議だよ。」
 「僕もそう思う。」
厭味で言ったのに周助にあっさりにっこり肯定され裕太は言い知れぬ恐怖を感じた。



こんな悪魔のような兄貴に魅入られ”英二さんが可哀想だ”と密かに思う裕太だった。
しかし裕太はわかっていなかった。その兄貴は悪魔のようなのではなく悪魔だという事に・・・・・・・・・・・・・・・・。
こうして不二家の夜はふけていき、周助の策略により裕太は留まる事となったのだ。






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