僕らのアイドル! 3


鍵をかけた宝箱 鍵はとうに失したまま
その宝箱取られたら 悔しいかい

開かないと知っているのに

鍵が開かない宝箱 鍵など永遠にない
鍵も使わず誰かが開けたら 悔しいかい

開かないって言い切れないから

鍵が判らない宝箱 鍵の形も思い出せない
鍵が判らないなら 中身も思い出せない

中身なんてないのかも



 「赤澤。離せ!」
観月は強い口調と強い眼差しで赤澤を押さえつけた。
 「観月。好きなんだ、本当に好きなんだ。」
 「だからなんです。」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
形成は完全に逆転していた。さっきまで押していると思われた赤澤は完全に観月の気迫に呑まれていた。
赤澤は観月の腕をしぶしぶ開放した。
 「本当に貴方はバカ力ですね。腕が痺れてしまったじゃないですか。」
観月は腕をさすりながら厭味を言い赤澤に精神的口撃をくらわした。
 「ウッ。ど、どうせバカ澤だよ。」
 「まったくですね。貴方はバカ澤でバカ力です。」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
観月の睨み目に赤澤が言葉を無くす。

それは黙殺された恋。
告白はないものにされ残されたのは拒絶と軽蔑と決別のみなのか?

 「悪かった・・・・・・・、観月。」
観月の顔が見れず赤澤は背を向け自室へ戻ろうとしたそのときだった。
「赤澤。・・・・・・・・・・すみません今まで気付かなくて、ですが僕には好きな人がいるんです。」
観月は伏せ目がちにそう赤澤に告げた。
しかし大暴走赤澤は観月のあまりの可愛さにさっきの事も忘れつい言ってしまった。
 「・・・・・・・・・・・・・み、観月、き、き、キスしたい。」
「調子に乗らないで下さい。バカ澤!」
そう言って観月は険しい顔と口調で切り捨てた。
すると目に見えて赤澤がガックリと肩を落とした。
観月はそれが可笑しくていつもの人の悪い笑みを浮かべると赤澤の頬へと軽いキスをした。赤澤は慌てふためき頬を抑え奇声を発した。
 「み、み、み、み、観月?!」

 「うわぁぁぁぁっぁっぁ!何しちゃってるんですか?!観月さん!部長!」

慌てふためいたのは何も赤澤だけではないみたいで今帰ってきたばかりの不二裕太も目撃した早々に奇声を発した。
 「何でですか?観月さん。今観月さんから部長にキ、キ、キスしてるように見えたんですけど・・・・・・・・・。」
 「そうですよ。」
ガガーーーーーーーーーーーン!!と形容できそうな顔を裕太はしていた。
赤澤の胸倉を掴み涙目で”何故ですか”と食い下がる裕太。
 「は、離せ、裕太。お、お、お、お、俺が聞きたいくらいだ。」
 「ご褒美ですよ。」
赤澤が苦しそうに呟くのを聞いて観月がゆったりと答えた。

 「「ご褒美?」」

 「そうです。ご褒美ですよ、赤澤。」
 「そのご褒美、何をしたらもらえるんですか?」
観月の言葉に呆然とする赤澤を突き飛ばし、裕太が凄い勢いで食いついてきた。
 「そうですね〜。裕太君の場合は何にしましょうかね?」
 「なんでもします!」
 「じゃあとりあえず、コートに行きますか?」
綺麗な微笑で裕太に問い掛ける観月。
 「はい!」
嬉しそうににっこり微笑んで頷いた裕太は自分の荷物を置きに部屋へ飛んでいった。
残された赤澤は観月に質問した。
 「観月、俺は褒美を貰えるような事は何もしてないぞ。」
それどころか・・・・と続けようとした赤澤を遮って観月は呟いた。
 「しましたよ、告白・・・・・・・・・・・。そんな事僕には出来ませんから・・・・・・・。」
 「・・・・・・・・・・・観月。」
二人の間にしばしの沈黙が落ちた。
 「赤澤もコートへ行きますか?」
 「行く、柳沢も淳も誘うか?」
 「そうですね。」

 「それと観月。俺、諦めないからな。」

 「お好きにどうぞ。行きますよ。」
そう告げ観月はラケットを取りに自室へ下がった。


「諦められないだろ。そんな風に言われたら・・・・・・・・・・・バカ澤なんだから。」
一人ごちて赤澤も自室へ向かった。




 「部長、遅いっすよ。部長に勝ったら観月さんがご褒美くれるって言うんで勝たせてもらいますからね。」
観月とアップを済ませた裕太が嬉々とした顔で赤澤にそう宣言した。
 「いつの間にそういう話になったんだ?」
赤澤は不機嫌そうにシューズを履きながら聞き返した。そんな赤澤に観月が楽しそうに答えた。
 「赤澤、君が勝ったら君にもご褒美を差し上げますよ。今度は唇にね。」

「「何?!」」

観月の言葉に赤澤、裕太の二人は同時に叫び声を上げた。
 「絶対に負けませんからね。」
 「こっちこそ絶対に勝つ。」
そんな二人を横目に観月は小さく『冗談だったのにな』と呟いた。まあでも二人のやる気が出るのならそれはそれでいいかとも観月は思ってもいた。


 「観月。遅くなって悪いな。あれ?あの二人なんであんなに燃えてるんだ?」
 「ホントだ〜ね。裕太まで熱くなちゃって?」
 「さあ、何ででしょう?」
遅れてきた柳沢と木更津に観月は一人惚けて見せた。
 「ご褒美は俺のものだ!」
 「いえ、部長には渡しません!」
 「「ご褒美?」」
顔を見合わせ何の事かと?マークを飛ばしう木更津と柳沢は赤澤と裕太を問い詰めるためにコートに乱入していく。
後には一人したり顔の観月の盛大な笑い声がテニスコートに響いてた。

結局観月はご褒美を裕太に上げ、その場はお開きとなったのだが・・・・なんにせよ恋する男の力は偉大だ。




 「裕太君。少しいいですか?」
夕食も終わり部屋で寛いでいた裕太のもとへ観月が突然尋ねてきた。
 「は、はい。観月さんどうしたんですか?」
 「少し外行きましょうか?」
 「はい。」
観月は裕太を日もすっかり落ち暗くなり始めた公園まで連れ出すとベンチに腰掛缶コーヒーを差し出した。
 「あ、ありがとうございます!」
 「いえ。」
嬉しくて声が上ずったままお礼の言葉を口にする裕太に観月は短く答えた。
 「それで話ってなんっすか、観月さん?」
 「実は今日、不二君に会いました。」
 「ヘッ?周助にですか?」
突拍子もない話題転化に裕太は思わずスットンキョンな声を上げる。
 「そうです。」
 「ルドルフまで・・・・?」
観月に頷きだけの静かな肯定をされ裕太は周助に対して怒りが込み上げてきた。
 「なんか言ってたんですかあいつ?」
 「特には・・・世間話程度ですけど・・・。」
――あいつが観月さんと世間話?何のために?あいつの事だ何の目的もなくこんなとこまでくるはずがない!
 「そうですね気になることといえば・・・・・。裕太君には最近好きな人が出来たとか?」
観月は不二との話を思い出すように呟いた。
 「ハアッ?!そ、そ、そんな事あいつが言ったんですか!」
 「ええ言いましたよ。」
照れと怒りにより一気に真っ赤になった裕太。――よりにもよって本人である観月に言うなんて周助の奴はどういうつもりなのか?裕太の頭にはそればっかりがぐるぐると渦巻いていた。
 「そ、そ、そそ、そのそれは・・・あの・・・・・・・・。」
言葉が上手く出ない裕太は観月の顔もまともに見れなかった。
 「話を聞いたとき少し気になったんです。裕太君が好きになった人は一体誰なんだろうって・・・・・・。」
 「エッーーーーー!!それはどういう意味ですか?」
動揺が思いっきり顔に声にでてしまう裕太。観月は少し微笑んで答えた。

 「言葉どおりですよ。」

 「!?!?!?!」
声にならない叫びが裕太を支配する。観月さんもまさか俺のことを?そんな虫の良い考えが浮かんでは消え浮かんでは消えしていた。
 「僕も好きな人がいるんです。」
 「・・・・・・・・・・・?!・・・・・・・・・・・・。」
――み、観月さん。それは、それは、それは、ドキドキドキドキドキ・・・・・・・・・・・・。
裕太は俯きつ目を瞑り次に続く言葉を待った。
 「互いに片想いですね。裕太君。」
――????
観月の言葉が自分の予想から外れていくので裕太はポカンとしてしまった。
 「僕はこんなに恋が辛いものだとは知りませんでした・・・・・・・・。裕太君も辛い恋をしているのですか?」
 「俺は・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
――俺じゃない。観月さんの好きな人は俺なんかじゃない。観月さんの瞳には違う人が映ってる!


 「すみません!」
突然立ち上がり顔もあげずに大声で謝った裕太に観月は驚いた。
 「裕太君?」
 「俺、実家に忘れ物したみたいなんでちょっと取りに行ってきます・・・・・・・・・。消灯までには戻ります。」
 「そうですか。」
 「話の途中なのにすみません。」
そう告げると振り向きもせず裕太は走っていった。自分の涙を観月に見せないように・・・・・・・・・。


恋がこんなに辛いものだと言った貴方の唇が今は見るのも辛い。
あれほど恋焦がれ欲していた存在なのに手に入らないというだけで辛い。
俺の中で貴方への欲はこんなにも膨らんでいたのか・・・・・・・・・・。



 「周助。誰か着たみたい。見てくれる?」
 「判ったよ。姉さん。」

 「どちら様ですか?」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
 「?悪戯か?」
 「・・・・・・・・・・・・俺。」
 「えっ?裕太?」
周助は慌ててドアのロックを開け、扉を全開にし裕太を迎えた。
 「どうしたの裕太?まさか帰ってくるとは・・・・・・・・・・・。泣いてるの?」
周助の開口一番の言葉に裕太はさっきまで泣いていたのを忘れ赤い目を隠すように
強気な口調で言った。
 「別に泣いてなんか。俺は・・・・・・・・・・・・。」
 「失恋したの?」
 「!、何でそれを?!」
 「観月、変わったよね。誰が変えたのかわかる?」
 「え、え、いや・・・・・・・・・・。」
 「観月はその人に恋してるんだよ。」
 「それがどうした。大体俺は別に観月さんを好きなわけじゃ・・・・・・・・・・。」
この期に及んでまだシラを切ろうとする裕太が可愛くてつい苛めてみたくなった周助は言葉を続ける。
 「裕太が知らないなら僕が探すよ。誰が観月を変えたのか興味あるからね。」
にっこりと笑顔でダメージを与える周助に裕太は怒りを覚えた。
 「観月さんに手を出すんじゃね!」
 「そんなの裕太に関係ないだろ。」
 「うるせ、うるせ、うるせ。関係なかろうがなんだろうがだめなものはだめだ!」
 「どうしてさ裕太は振られたんだろ?」
 「う・・・・・・・・・・・・・・・・・。」



 その日は裕太は寮に帰らなかった。その代わり不二家はいつも以上に賑やかで特に裕太の絶叫が響き渡ったとか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。





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