僕らのアイドル! 2


完全主義の完璧主義 何が何でも一番好き
両手に余る下僕引き連れ 今日も歩く姿は芍薬の花

それが僕らのアイドル

人は僕らを親衛隊というけれど
彼にはその魅力がある 恋は盲目

それがアイドル



 不二裕太は今、帰省していた。
久しぶりに母さんのかぼちゃ入りカレーと姉さんのラズベリーパイを食べて周助と語らっていた、というか一方的に周助が裕太に話し掛けていた。
「美味しい、裕太?」
「うるせえ。」
ぶつぶつと文句を言いながらも美味しい料理に負けその場を離れられない裕太に周助は楽しそうに話し掛けた。
「ホント、久しぶりに帰ってきたんだから今日は泊まっていけるんだろ?」
「いやすぐ戻る観月さんに・・・・・・・。」
観月と言った瞬間裕太は不覚にも赤面してしまいそれを見逃す周助ではなかった。
「裕太、学校変えない?ルドルフより青学の方が楽しいよ。」
「変える訳ないだろ!観月さんがいるし・・・・・・・・。」
観月という名を出した瞬間、周助の顔色が変わったのがわかった。
「観月がなに?」
「・・・・・・・・・・・・。」
蛇に睨まれた蛙とはこのことで裕太は今、正に固まってしまった。
「観月が何?」
「いやあの・・・・・・兎に角今はルドルフから転校するきないから。」
裕太は慌てて食卓から立ち上がり自室へと逃げって行った。後に残された周助はいつもの笑を引っ込め開眼していた。
「観月か・・・・・・・。」

 周助は裕太が好きだった。変な意味でなく、可愛くて仕方ないのだ溺愛とは正にこのことだろう。弟を思う兄の気持ちそれは弟には決して分りえない。
小さい頃は周助の後をついて回っていた裕太が何時からだろう寄り付かなくなっていったのは・・・・・・・・・。
そうこの寂しい気持ちを表すピッタリの言葉は花嫁の父の心境といったところだろうか。
「年頃なのかな。」
それもしょうがないと思うのだが周助がどうしても許せないのは裕太を奪おうとしているのがアノ観月だということだ。
――――観月はじめ、いけ好かない徹底データ主義。その上勝つためには手段を選ばず、選手の事などお構いなし。
その餌食に裕太もなりかけたというのに気付かないとはなんともお人好し、そこがいいとこでもあるんだけど・・・・・・・。
「一度釘さしとくか。」





 一方その頃ルドルフでは・・・・・・・・。
「赤澤?・・・どこいったんでしょう?裕太君も昨日から帰省しているようですし・・・・・。そういえば・・・・・・・僕も家族とは随分会ってませんね・・・・・・・・・。」

「観月〜!どうしただ〜ね。」

柳沢は観月を驚かそうと思って考え込んでいる背中に急に話し掛けた。
「柳沢。寮には殆ど人がいないみたいですね。」
観月は振り返ると驚くことなく平然と答えた。 
「ああ軒並み出かけてるみたいだな残ってるのは俺と観月と淳ぐらいじゃないか?とわ行っても俺たちももうすぐ出かけるけど・・・・・・・・・。」
柳沢はおどかすのに失敗して残念そうな顔でそう答えると観月は少し俯き考えるそぶりを見せたが急に顔をあげ唐突に呟いた。
「突然ですけど出かけようと思います。後の事よろしく。」
「そ、そう行ってらっしゃい・・・・・・。」
柳沢は観月の突然の宣言に驚き、いつもの口癖を忘れてしまい、そのまま観月が去っていくのを呆然と見つめていた。
「あ、このこと淳に言っとかなきゃだ〜ね。」
柳沢はハッと我に帰ると慌しく木更津のところへと翔けて行った。



「いったい誰に会おうとしているのでしょう・・・・・。まさか家に帰るわけになど行かない・・・・・・・・帰るところなどないのに・・・・・・・・・・。」

足の向かう先が何処を定めているのかわからず充てもなく歩く観月。
急なホームシックに思わず学園を飛び出してみたが家に帰るわけにも行かず考え無しだった自分の行為が恥ずかしくなってきていた。
観月はこんな時一人での過ごし方もぶらりと何処かへ立ち寄る行為も出来ない自分が呪わしかった。
「・・・・・・・・戻りますか。」
駅まできて踵を返し学園に戻ろうとした観月の腕を誰かが取った。
「・・・・・・誰ですか!不二周助?!」
一体何故?観月の思考はそれだけに支配されていた。
「いつも弟が世話になってるね。」
「いえ、こちらこそ。腕、離してもらえませんか?」
観月は周助の読めない表情に困惑しながらも腕を振った。
「あ、これは失礼。どこか急ぎでお出かけだったのかな。」
「ええ急いでますので用がないなら失礼したいのですが・・・・。」
観月は相手を睨みつけると早々に立ち去ろうとばかりに嘘を付いた。周助のあの笑顔といつまでも対じして居たくないというのが本音だった。
「ちょっと聞きたい事があったんだ。」
「ぼ、僕にですか?」
不二周助の意味不明な行動にどう反応していいのか分らない観月は思わずどもってしまった。
「観月。裕太に好きな人いるみたいなんだけど。」
「はあ・・・・・・・・・・・・・・それは初耳ですが・・・、だからなんですか?」
まさか自分の事であるなんて知らない観月は興味もないといったように呟いた。本当は興味あったがそれを周助に悟られるのはしゃくだから。
「誰だかわかる?」
「知りませんが???」
「そうならいいんだけど。」
「過保護ですね不二君。そんなこと言うためにわざわざいらっしゃったのですか?それほど弟が大事ですか?」
観月は厭味でなくつい本気でそう聞いてしまった。観月には兄弟はいない、それどころか今は親とも会ってはいない、寮にくる事になった理由は誰にも話していないが親との関係がうまくいってなかったからだ。
今の観月には裕太の様に帰る所があるわけでも見守ってくれる人がいるわけでもなくただ家族の意味もわからずにいた。
そんな観月が周助の目にどう映ったのかは定かではない。
「大事だね・・・・・・・・・弟だから・・・・・・・・。」
周助の言葉に観月はふっと考えるように目を伏せたが小さく「そうですか」と呟くとそれっきり黙りこんでしまったので引き際と悟り周助は別れの言葉を告げた。
「それじゃあ。」
またと言って去っていく周助の背に観月は言い知れぬ思いを抱えた。
結局一人になった観月はそれから行くとこもないので学園へと引き返していた。



「観月。昼間、出かけたんだってな?」
「赤澤こそどこへお出かけだったんです?」
観月は質問に質問で返す事で赤澤を煙に撒こうとした。
「俺は観月に聞いてるんだ。不二周助と会ってたろ?」
「何の事ですか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
少なからず動揺を見せる観月。観月は一体いつ誰に見られていたのだろうかといことだけが気になっていた。
そんな観月に赤澤はさらに畳み掛ける。
「不二周助は何の用だったんだ。」
「知りません。僕が知るわけないでしょう。」
観月は不機嫌そうにそう言いきると赤澤に背を向けた。
「やっぱり、来たのは不二だったんだな。」
「あ、赤澤。カマかけたのですか・・・・・・・・・・・・・。」
「ああ、俺は皆が言うように単純バカ澤じゃあないからな。観月のことだけは・・・・・。後輩が駅のところで観月が誰かと会ってるって聞いておかしいと思ったんだ。」
赤澤の責めるような口ぶりに観月は知らず知らずと声が上ずっていた。
「・・・・・・・・・・・・・例え、僕と不二周助が会ってようと赤澤には関係ないことです。」
「本気で言ってるのか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「観月は本気で言ってるのか?」
「あ、赤澤・・・・・・・?」
観月は凄い力で腕を捕まれ今までに見たことの無い赤澤の厳しい表情に驚きを隠せないでいた。
「赤澤、離して下さい!」
「観月俺は・・・・・・・・・。」
無言で赤澤を睨みつける観月、赤澤は激高にまかせ観月に腕を掴んだまま詰め寄り声を荒げた。
「俺は観月が好きだ。関係ないなんて言わせない!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「観月・・・・・・・・・・。」
詰め寄る赤澤。
それは今まで観月がみたこともない、否別人のようで恐怖さえ覚えた。
「赤澤・・・・・君は何を?」
観月の言葉に赤澤は何も言わず距離を詰める。






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