わかっているけど |
ありがとう 誰かから届いた気持ち 嬉しくて涙が出た 心に羽が生えた 笑顔に隠された君の真心に触れた 街が光を放ち 形をかえ息づいた 今生きていることが 許された気がした |
「打倒海南!」 「ウィース!」 熱気もこもり気合の入った掛け声が木魂する体育館に突如異変が起きた。 「仙道!」 突然現れ叫び声を上げた人物に驚きを隠せない陵南の面々はあんぐりと口を開けたまま固まった。 もちろん名指しで叫ばれた仙道は一瞬いつものポーカーフェイスが出来なかった。 「ふ、藤真さん。」 それでも咄嗟に会話が出来るあたりさすがわ仙道というべきだろうか。 「仙道、ちょっと話がある。」 凍りついた陵南メンバーを無視して話を進める藤真と仙道。 仙道は仕方なく藤真に近づいていった。 「どうしたんですか藤真さんがじきじきにお出ましになるなんて?」 バキッ 藤真は近づいて来た仙道へ手加減なく鉄拳を飛ばしたのだこれには誰しもが予想だにしないことでさすがの仙道も目を見張った。 「これでおしまいだ。」 いったいどうして殴られたのかわからない仙道と話がまったく見えない陵南メンバーに監督田岡、ボー然と立ち尽くした。 藤真は陵南へ騒がせた事の詫びを告げるとさっさと体育館を後にしていった。 「待ってください。藤真さん。」 いち早く我に返った仙道は藤真を追いかけた。 「一体なんだったんだ?」 魚住の発した言葉は陵南全員の疑問だった。 「藤真さん。」 体育館を出たところの渡り廊下で藤真を捕まえた仙道は藤真の腕を掴み歩みを止めさせると名を呼びかけた。 「いったいどうしたんです?」 そう立て続けに問い掛けると強引に藤真を自分の方へ顔を向けさせるとそこには仙道が思いもしなかった藤真の顔があった。 「藤真さん泣いてるんですか?」 「泣いてなんか・・・・・・・・・・・。」 藤真はそう呟くと顔を背け仙道の腕を振りほどこうとした。 「離しませんよ。離せるわけないでしょう。どうしたんです。」 「煩い。離せ。」 他校の制服をまとい人の注目を集め何ともバツの悪い藤真は仙道からいやこの場から離れたくてたまらなかった。 しかし仙道は例え注目されてようがまったく話の見えないこの状況でこの手を離すことが出来るはずもなかった。 「仙道せめて手を離して場所をかえよう・・・・・・。」 「わかりました。離しますけど逃げないで下さい。」 仙道は藤真が頷くのを確認してから手を離すと人目のつかない校舎裏へと案内した。 「誤解です、藤真さん。」 仙道は藤真に事と次第を聞き出すことに成功したがさっきから何回この言葉を繰り返した事だろう。藤真は聞く耳持たないといったように話を聞こうとしなかった。 「わかってる、どうせお前は俺の事などどうでもいいと思っているのだろう。先に好きになったのは俺なんだし・・・・・。」 藤真は今まさに泣き出しそうな顔なのに仙道の方は何故だか嬉しさがこみ上げてくる意識してないと顔が緩んでしまう程に・・・・・・・。 「わかってないですよ。藤真さんが好きになってくれるよりも、もっとずっと前から俺は貴方の事が好きで好きでしょうがなかったんですよ。」 「仙道・・・・・・・・・・・。」 仙道はそっと藤真の肩に手を回し引き寄せた。藤真は呆然と仙道を見つめ返す事しか出来なかった。 「藤真さんがそんな風に思っていてくれたなんて嬉しいです。けど馬鹿げてます俺の愛を疑うなんて。」 藤真の肩口に顔を寄せ耳に直接送り込むように囁く仙道に藤真は「天性のタラシ」 という言葉が浮かびながらもドキドキしていた。 「藤真さん続きは今夜、家で・・・・・・・・・・。来てくれますよね?」 「か・・・・・考えとく。」 仙道の口撃に藤真はそう返すのがやっとだった。 その夜、仙道の家に藤真が現れたかどうかはまた別の話・・・・・・・・。 |
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