わかっていたけど


陽だまりと貴方はとてもよく似ている
陽だまりも貴方も暖かいのは
心に詰まっている宝物が一緒だから

陽だまりと貴方はとてもよく似ている
冷たく荒んだこの俺を包み込んでくれるから



 「いらっしゃい。待ってましたよ。」
仙道の家へ結局やって来た藤真は玄関で戸惑っていた。仙道に促されても靴を脱ごうとせず立ち止まってしまった。
 「入らないんですか?」
 「・・・・・・・・・・・・帰る。」
仙道に聞かれ藤真は一言呟くとくるりと踵を返しそのままでていこうとした。それを仙道は腕をつかんで阻止する。
 「待ってください。藤真さん逃げないで下さい。」
仙道の真剣な瞳が藤真の心を射抜く。
 「仙道・・・・・・・・。」
 「藤真さん。」
藤真は無言で仙道の部屋へと入っていった。
 「座ってください。何飲みますか?コーヒーとお茶と後スポーツドリンクしかないですけど。」
 「コーヒー。」
藤真が答えると仙道は「はい」と笑顔で頷き台所へお湯を沸かしに行った。藤真はこうしているまにも逃げ出したくて堪らなかった。
あんな事をして仙道とどんな顔して会えばいいのかわからず藤真は仙道の家の前を何往復もした。
藤真は居たたまれなくなりすっと立ち上がった。そこへ仙道がマグカップを持って戻ってきた。
 「仙道やっぱり帰る。」
 「藤真さん、コレ無駄にするんですか?」
 「ごめん。」
仙道と目をあわすことが出来ず俯く藤真に仙道は苦笑をした。
 「何でそんなに怯えているんですか?」
 「怯えてなんかいなぃ・・・・・・・・。」
一瞬顔をあげたもののまた伏せてしまうと黙り込んでしまう藤真。仙道はとても辛抱強い態度で待った。
 「・・・・・・・・・・仙道、もう終わりにしよう。俺には限界なんだ・・・・・・・・・。」
 「別れたいってことですか?」
 あくまでも優しく追い詰めることなく問う仙道。しかし今の藤真には無言のプレッシャーが余計に重くのしかかってくる。
 「そうだ。別れてくれ・・・・・・・・・・・。」
 「あの事が誤解でも?」
 「アレはきっかけに過ぎない。こんなのおかしいよ。俺はお前といてもちっとも不安が取れない。お前が言うことを信じてない訳じゃないのに・・・・・・・・・・・・。」
藤真の瞳に暗く淀んだものがよぎる。仙道はまだ落ち着いていた。
 「藤真さんを幸せに出来ないのなら一緒にいても意味がないですね。」
仙道の決定的な言葉に藤真は身勝手だが傷ついていた。
 「・・・・・・・・・・・・・・・。」
 「藤真さん、折角ですからコーヒー飲みませんか?」
藤真は仙道の言葉に頷きながらコレを飲んだら飲み干したら終わりなのだと思った。藤真は受け取ったコーヒーに口をつけるとちびちびと飲んだ。飲むのをやめる事も出来ず、飲み干す事も出来ずただひたすらちびちびと・・・・・・・・・。
 「藤真さん、最後みたいなんで本音をいわせてください。」
仙道がポツリと呟いた。藤真はカップから唇を離すと手にもったまま仙道の方へ顔だけ向けた。
 「俺はどうしようもないくらい藤真さんが好きで余裕がなくなってて藤真さんのことまで考えられなかったんです。すいませんでした。そんなに不安にさせていたなんて知らなくて・・・・・。」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・どうして。」
 「え?」
 「どうしてお前が謝るんだ。お前は悪くないじゃないか?俺のせいなのにどうしてそんなに潔くお前が謝るんだ。はっきり言って俺の言ってることなんて勝手で我儘な事ばっかりだ。それなのに文句どころかお前が謝ったら俺が惨めじゃないか・・・・・・。」
藤真が一気に捲くし立てると仙道は軽く頭を振って否定した。
 「そんな事ないです。俺たちには人から見たら越えなくちゃいけないいくつかの壁があるのにそれなのに俺は浮かれて全然気が回らなくなってたんです。回りも見えずただ闇雲に藤真さんを不安にさせた。俺の責任なんです。」
 「・・・・・・・・・仙道。」
 「藤真さんの笑顔大分見てないです。それが答えだったんですね。」
そう言い切った仙道の顔を藤真は一生忘れないだろう。心に刻まれた一瞬だった。
 「仙道!もう一度初めからやり直そう。お互いどこかで道を間違えただけだ。俺はお前がいいお前じゃなきゃいやなんだ。」
藤真はそう叫ぶように告げると手に持っていたマグカップを床に落とし(幸い飲み終わっていた)仙道に抱きついていた。
 「・・ふ、藤真さん。」
 「俺も見えてなかった仙道が・・・・・・・・。お前今自分がどんな顔してるかわかってるのか・・・・・・・・・・・。」
 藤真に言われ仙道はぼんやりと顔に手を当ててみるとそこには滴が・・・・・。
 涙だった。
 「・・・・・・・・・・・!?」
 「仙道、好きだ。」
 「俺もです、藤真さん。ずっと一緒にいていいですか?」
 「仙道。・・・・・・当たり前だろ。」
 時計の針が規則正しく鳴る中、藤真と仙道の影がその晩いつまでも離れることはなかった。




 「ところで結局あの女はなんだったんだ仙道?」
 「いや、それはもういいじゃないですか。」
 「よくない。やっぱり別れる。」
 「ワァーーーーー待ってください。藤真さ〜ん。」






 終わり






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