さよならの言葉より---1---


告げたい言葉はありますか
伝えるべき言葉はありますか

あの人の心に残したい言葉を
声にして今、言ってしまおう





***act.1 ポケットの中に(S・F)***


 僕のモノになって欲しいのに・・・。
 僕のポケットには君は大きすぎるね。


 桜も蕾をつけ始めたころ春の訪れを予感させていた。
 前途ある若者の門出を祝うような晴れの日、抱えきれない程の花束を貰い困ったように微笑む英二もその一人。
 卒業式も滞りなく終了し、英二は後輩の女の子に囲まれ花束を貰ってしまったのだ。
 僕は女の子達を言葉は悪いが軽くあしらいそっと英二に近づいていくけど忙しくて気づかないようで笑顔で応対していた。
 「菊丸先輩、高校へ行っても頑張ってください。」
 涙声と黄色い声が交じり合う。
 「ありがと。」
 英二は一人一人にお礼を言って受け取る。こういう面は僕と違い意外と真面目なんだなって思う。
 思ってくれた人にはいつでも誠実に答える英二。
 自分を向けられる好意に敏感でそれを感じ取ると邪険には出来ない。でもそれは時として残酷。

 ほら、また一人。君の笑顔が僕以外の人を捕らえて近づいていく。
 どうして君は僕一人のモノになってくれないの?





***act2. 埋まらない差(K・K)***


 俺はただただ考えていた。
 このたった一年の差がどうやったら埋まるのかを・・・。


 ウザッタイ、そうはっきり言えばいいと思う。
 困ったように微笑むんならはっきり言ってやればと思わずにはいられない。
 式を終えた先輩を俺はジッと眺めていた。
 先程から囲まれて困ってるはずなのに花束を受け取る先輩は誰にでも笑顔を浮かべる。
 俺は目が離せずにずっと見ている。すると目が合った。

 うろたえる俺など気にしないで先輩は満面の笑みで近づいてきてくれた。
 「海堂!いよいよ三年だね〜頑張れ!」
 「ウッス。」
 「冬は惜しかったけど夏こそは全国制覇だかんな?!桃と力合わせて悲願達成だかんね!」
 先輩の口から奴の名前が出たんで不機嫌に顔を顰めると先輩は頬を膨らませ唇を尖らせて不満そうに言う。
 「コラッ、部長と副部長がそれでどうすんだ!」
 「うっ・・・ウッス。」
 渋々返事すると先輩は得意げに「分かれば宜しい!」と頷きまた笑みをこぼす。
 一年の頃から部全員励まされた笑顔に俺も自然と顔が緩む。
 明日からはもう見れなくてもこの瞳にしっかり焼き付けて・・・。
 「英二、そろそろ時間だよ。」
 遠くの方から自らを呼ぶ声に先輩は顔だけ向け手を軽く振った。
 「そんじゃ、俺は上に行ってもテニス三昧だから一年なんてあっという間だにゃ〜。もし海堂が上がるならすぐ会えるもん。それまで怪我なんかしないように身体に気をつけるんだぞ!」
 「ウッス。」

 その時、言葉を綴る先輩の瞳は俺を通して誰かを見ていた。
 先輩と俺の一年の差は一生埋まらないっすか?





***act3. 別つ未来(K・E)***


 知らないでいれば良かった。
 だってずっと一緒のチームメイトだったから全然、違う学校に行くことになるなんて想像も出来なかったんだもん。

 うっそ!マジ?
 それを何度も心の中で繰り返したのに一向に言葉は出てこない。
 『知ってるか菊丸?』
 『何?』
 『・・・が外部に行くって?』
 『・・・・』
 でも今考えると可笑しいよね。
 だってアレだけテニス上手くて、頭だって良くて、生徒会長までしてるんだからどこの外部だって好きなだけ推薦貰えるもん。
 それなのにどうしていつまでも一緒で同じ部でテニスできるって気がしていたんだろう?

 そして何も話すことも出来ず当日、卒業式を迎えた。
 式の間中、意識は絶えず彼に集中してるのに視線を向けることは出来なくて歯がゆい。
 でも見たら俺の負け、このまま姿を見ずにお別れできたら俺の勝ち。
 そうでもしなくちゃきっとお別れなんて出来ないから・・・。
 一目見たらもう、離れられないから。

 たくさんの花束を貰ってすっごく嬉しいのとやっぱりお別れなんだと思い知らされて寂しいのとが入り乱れ上手く笑えなかった。
 けど海堂と話して俺が気負うほどそんなにかわらないのかもって思えたら自然と笑えた。
 そんで不二に呼ばれてもういかなくちゃって思って海堂にさよならの言葉を告げてたら海堂の向こう側に立っていたんだ。


 今日は会っちゃいけない人が・・・・。
 別つ人が。未来が別つ人が。







言い訳
 今回は卒業式をお題にして書いてるんですがなんでかなぁ〜っ
初っ端は不二さんから入って海堂を経て英二に戻ってみました。
 次回は会っちゃいけない人からです。
ちょっと伝言ゲームみたいなところが新しい試みな話で
HANAKOは気にってるんですが。如何でしょうか?読み難いですか?
 HANAKOがいくら楽しんでも読んでくれる方が読み難ければ
それは作品ではないと思います。
 書いてて楽しいのは勿論。読んで読めなくては物語とは言えません。
 物書きは書き手と読み手がいて始めて成り立つと思うのです。はい。
 ですから自分さえわかればいいのって言っちゃったらお話しになりません。


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