密やかに進め 前編


       大きなノッポの古時計 おじいさんの時計
       百年いつも動いていた ご自慢の時計さ

       おじいさんの生まれた朝に やってきた時計さ
       今はもう動かないその時計

       百年休まずにチクタクチクタク
       おじいさんと一緒にチクタクチクタク

       今はもう動かないその時計


        『「大きな古時計」より』



こんな話を聞いたことあるだろうか?
腕時計は人が身につけていないと途端に電池が切れてしまう。
それは時計が人と共に時を刻むから・・・・身に付けられなくなった時計はその役目を終え、時を刻むことをやめてしまうのだ。

 時計とは人と共に針を刻む 生と時を永遠に・・・・・



 「ねぇ英二。」
 「なぁに不二。」
 「ねえ〜英二。」
 「なあにー不二。」
二人は顔を見合わせてクスクス笑った。

 「ねえ英二。前から気になってたんだけど。」
 「なあに不二?」
 「英二は腕時計しないの?」
 「したいけど俺専用のってないんだ。」
 「えっ。」
 「家族が俺はすぐ壊しちゃうからって持たせてくれないんだ。でも今は不二がいるから平気!知りたいときは不二がすぐに教えてくれるからにゃ。不二が俺の腕時計の代わり。」
 「ひどいな僕は英二の時計代わり?」
不二は菊丸の一言に少し眉を寄せ怒った振りをして答えたが心の中ではとっても嬉しかった。いつでも一緒だよって言われているようで。
 「そっ!不二時計だよ〜ん。」
菊丸もふざけて返し、また二人は互いに笑いあった。

二人はいつも一緒だったから、疑うことなどなかった。
お互いずっと一緒にいられると、二人はいつも一緒だと・・・。



 「不二、不二、不二周助〜。俺は天才不二さまだだぁ〜ん。」
菊丸は至極機嫌よく意味不明な替え歌を歌いながら部室へと向かっていた。
今週は掃除当番に当たってしまったがそれもチャチャット終わらせて部活に行けばまた不二に会える、それだけで菊丸はご機嫌なのだ。
 「エージ先輩!」
 「あれ〜珍しく遅いね、桃も今から部活?」
 「そうなんっすよ。先生に掴まって用を言いつけられたんです。エージ先輩は?」
 「俺は今週掃除当番。ヤバっ早く行かないとまた手塚に走らされちゃうよ。」
 「あ、ホントっスね、もうこんな時間だ。」
桃城が腕時計で時間を確認し菊丸にも見せようとしたその時・・・・。
 「桃、見せなくていい!時間なんとなくわかるから見せなくていいよ。」
勢いよく言われ桃城は目をぱちくりさせたが菊丸は舌を出して「急に大きい声出してごめんにゃ〜」と言った。
 「いえ、急ぎましょうか。」
 「うん。」


 「英二、遅かったね。掃除長引いたの?」
一年の越前と話していた不二は菊丸に気づき駆け寄ってきた。
 「そんなに遅かった?何時?」
 「今ね、十五時三十八分かな。」
 「そっか、でも手塚がくる前でよかった。」
菊丸は不二に時間を聞く。そして不二も普通に答える。
 それが二人だけにわかる二人だけの確かめ方。

 「不二先輩。ちょっと相手してもらえませんか?」
不二と菊丸が話しているところに越前がやってきて出し抜けに呟いた。
 「おちび〜。不二は今俺と話してんの!」
 「英二。・・・いいよ、越前君。今すぐやろうか?」
ぶーぶー言う菊丸を軽くたしなめ不二は越前に返事した。
しかし不二は解かっていなかった・・・不二の背後で菊丸がどんな表情をしていたかなんて・・・。


 「良かったんですか?」
越前がコートに入ると不二に呟いた。
 「何が?」
不二はいつもの読めない表情で平然と答えた。
 「先輩のこと。」
 「英二のこと?」
 「そうっす。」
 「いいんだよ。英二はどうせすぐダブルスの練習だからね・・・・・。」
不二は無表情で呟いた。・・・・・・・無表情で・・・・。
 「両思いっすか。」
 「何が?」
 「・・・・なんでもないっす・・・・・・・・。」


 「英二、ごめん遅くなって、すぐ始めようか?英二?」
 「ん?あああ、ごめん。聞いてなかった、何?大石?」
 「練習始めようか。」
 「う、うん。そうだね。」







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