愉しいレッスンONE 2


乾は俺と不二にとってキューピットだから
心のこもったお礼をしたかっただけ
たったそれだけだったのに・・・・・・・・・・・



 「いぬーい。ねえ乾。乾ってば聞いてる?」
 「ン・・・・・・・・・・?ああ菊丸?」
俺はいつの間に寝ていたのか、菊丸の声によって起こされた。
 「乾?寝てたの?」
可愛い声をだし菊丸が首をかしげているのを見ているとトコトン俺はお人好しだと思う。
俺はこの菊丸英二を好きだった。
1年の時この部活であった時から好きだった。
ところがつい先日、俺の取り持ちで恋人が出来てしまい今はいい相談相手という位置に定着してしまった。しかも英二の恋人は天使の顔した悪魔。

 「ああいつの間にかウトウトしたみたいだ。」
俺が眠そうにメガネをしたまま目頭を擦っていると英二が控えめな声で聞いてきた。
 「乾に聞きたい事があるんだけど・・・。」
 「何?」
俺が平然と答えると英二は更に言いにくそうに口を噤んだ。いったい何が聞きたいのだろう?そして意を決したように重い口を開いた。
 「・・・・・・乾は誰がすきなの?」
 「・・・・・・・・・・・・・。」
そうくるか!まさか「お前だ」なんていえない俺は黙り込んでしまった。
 「だれ?」
 「・・・・・・・・そんなこと聞いてどうするの。」
 「うん恩返し!乾とその人を俺と不二でくっ付けてあげるのさ。」
・・・・・・・・・・それは恩返しとはいわないと突っ込むことも出来ず俺はまた黙った。
くっ付けるべき人が自分だとは英二でも思いはしないだろう。俺と英二をくっつけるのを不二が協力することもありえないし。
 「自分で当ててみなよ、俺みたいに。」
 「う〜ん。そうだよね、俺も不二もいってないもんな。どうしてわかったの乾は?」
苦し紛れの俺の言葉に英二が納得するとは思わなかったので話がそらせたことにホッとした。

 「よしじゃあヒントちょうだいよ。」
 「ヒント?」
 「好きな人の!俺が名前言うから違ったら違うっていってよ。ネ!」
 「違うだけでいいの?」
 「そう。」
 「いいけど当たりでも違うって言うかもよ?」
 「それでもいいの何となくわかるから野生のカンで!」
 「わかった。」

 「手塚!」
 「・・違う。」
まさかこの名前からくるとは思いもしなかった。
自分のことは棚に上げるが普通異性からだろう英二!
 「ホントに違うの?間があったよ今。」
疑わしそうに俺を見る英二。
 「異性からくると思ったから。」 
すると英二は「ア」っと口の形を作って驚いた。何故驚く?
 「そうか!そうだよね。」
いったい誰の名が出てくるのか少し期待しながらこのひと時を楽しんでいる自分に気が付いた。
 「ヒントは身近にいる人だよ。」

 「身近?う〜んじゃあ海堂。」
英二の思考が判らない・・・・・・・・・。
どうして身近で海堂になるのだろうか?
 「違う。」

 「それじゃ桃!」
 「違う。」
何処で桃城と考えたんだろう?

 「それともおちび。」
 「違う。」
だから何で越前なんだ!

 「今度こそわかった!河村!」
眼をきらきらさせてそう宣言した。
今度こそって?
 「・・・・・・・・・・・・・違う。」
 
 「ええええええっじゃあ誰?」
それを当てるのだろう。
 「いえない。」
 「ムムッまさか、不二!」
 「違う!」
俺は思わず力が入って叫んでいた。
誰があんな悪魔好きになるか!
 「う〜ム・・・・・・。ハッまさか・・・・乾の好きな人って・・・・でもそんな。」
 今度こそ気付いたか?まあこのまま行けば気付くとは思っていたけど・・・・・・・。
 
 「大石!」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
このガキ(怒)。


 「あははははは。」
俺と英二しかいない静かな教室に突如悪魔の雄叫びが響いた。
この笑い声は・・・・・・不二!
 「不二D」
 「不二!」
不二・・・・・・・・・・・・。苦々しく見つめる俺に不二はいつもの笑顔(心なしかいつもより上向き)を向けた。
 「英二こんなところに居たんだね。探したよ。」
 「不二ごめん。でもいつから居たのさ。」
 「う〜ん確か『乾は誰がすきなの?』って所だったかな。」
最初からか・・・・・・・・。
 「さあ英二、部活早く行かないと手塚に走らされるよ。」
 「ええっもうそんな時間なの不二、乾、俺先行くね。教室に鞄置きっぱなしだから。」
 「うん。英二じゃあ部室でね。」
英二が教室から去っていくと俺と不二は2人きりになってしまった。
 「・・・・・・・・・。」
 
 「乾、英二でしょ。」
 「何が?」
そ知らぬ顔してとぼけてみたが違うと言えれば・・・・・・・。
不二の目は笑ってなかった。それどころか開眼していた。
 「あげないよ英二は。僕からの乾へのお礼は別にチャント用意してあるから。」
 「そう。」
俺はなんでもない振りをし不二を見送った。


 イラーーーーーーーーーーーーーーーん。
 俺は心の中で絶叫していた。






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