月が見えなくて


決着のつけ方を教えてください
知らない事は愚かですか

決着がつくのを見届けてください
そしたら貴方は去っていくのですか

それなら決着などつかなくていい



 もう一度貴方に会いたかった。たったそれだけだったのに・・・・・・・・・・。


 運転手さんたちのお陰で2時前に到着する事ができた神だったが藤真が何処にいるかわからず成田を走り回っていた。
 「藤真さん。間に合ってくれ・・・・・・・・・。」
神は手近にあるカウンターに飛び込むと一息つく間もなく話し出した。
 「すいません。14時発の○○行きの便は・・・・・・。」
 「それでしたら●△ゲートになります。そろそろ搭乗時間になりますので・・・・・・・・。」
受付のお姉さんの話も最後まで聞くことなく走り出す神に時は無情にも過ぎていく。

 「あそこか。」
教えてもらったゲートには着いた神だったがお目当ての人は見つからずあたりを見回す。
 「どこなんだ。まさかもう搭乗したとか?」
日頃冷静な神は近年稀に見るほど焦っていた。当たり前だがここまできて会えませんでしたじゃ洒落にならない。牧にも馬鹿にされるし運ちゃんたちにも申し訳がたたないだろう。
 「あの人なら時間を潰す時、何をする?」
・・・・・・・・・・・・本?まさか英会話の本を読んでるなんてことはだけど他に何処へ?
神は踵を返したその時・・・・・・・・・・・・。視界に良く知る人物が飛び込んできた。

 藤真さんだ!

その幾度となく見つめてきた背中を見まごう事なきあの人の背中を見つけ神は一瞬眩暈を覚えたが、しかし軽く頭を振り気を取り直すと思い切って呼びかけた。

 「藤真さん。」

振り向いたその人は紛れもなく神がここまで追ってきた人だった。
一度は手からすり抜けていってしまった人。それが幻覚でなく近くに手の届く距離にいる。
神は抱きしめたい衝動に駆られ手を伸ばしかけたがそれを打ち破ったのは誰であろう藤真自身だった。
 「神・・・・・・・・・・・・・・・。」
藤真の落ち着いた声と表情に神は悲しくなった。藤真の気持ちはもう吹っ切っているとわかったから・・・・・・・・・・・。
まだ驚いて声を無くしてくれた方が良かった。なじって怒りをぶつけてくれた方が良かったと神は思わずにはいられない。
 「藤真さん殴っていいですか。」
悲しみのような怒りのような消化しきれない気持ちを最後だけでも受け止めて欲しい神は藤真に物騒なお願いをした。
 「いいよ。」
平然と答える藤真。
 「歯喰いしばってください。」
藤真は素直に神の言葉に従い目をつぶり歯を喰いしばった。けど神は藤真の顔を手で包み込むとそっと頬に唇を落とした。藤真が驚き一瞬ビックとしてもそのまま今度は唇を耳へ寄せ直接言葉を送り込むように囁いた。
 「好きでした。嘘じゃありません。・・・・・・・・でも今日限りで忘れます。約束破ってしまいますけど許してください。」
そう告げられ藤真は目を開いたがそこには神の笑顔があった。今までに見たことのないほどの穏やかな笑顔に藤真も本当にお別れだと悟った。

 「会いにきてくれてありがとう神。最後に会えてよかった。」
 「俺もです。」
二人はそこで”別れた”。
抱擁するでなく握手するでもなくただひっそりと”分れた”。


神は空港から出た外で藤真の乗る飛行機が小さくなっていくのを見つめ呟いた。
 「さよなら、藤真さん。」


藤真は滑走路から飛びたち小さくなっていく地上に向かって呟いた。
 「また必ず逢える。」


 奇蹟でなく必然で貴方を見つけてみせる 貴方を・・・・・・・・
 偶然でなく必然でお前を捕まえてみせる お前を・・・・・・・・




end

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