計画倒れ |
青学テニス部には今から約2年前から破ってはならない掟があった。 掟は呆れるほど簡単なもので菊丸英二には手を出すなというものだった。 理由はもっと簡単で例え誰であろうとみんなのアイドルに手を出すものは・・・・・八つ裂きの刑。 「ねえ〜乾、なんかいい手ないかな?」 早くきたら部室には乾しかいなかったため机にごろんとしていた英二だがいつしか乾に相談に乗ってもらっていた。 「フー、そうだな。ないこともないから協力してもいいけど・・・・・・本当に後悔しない?」 「うん、絶対しない。」 英二は乾の言葉に目を輝かせて力強く頷いた。それは二人だけの秘密。 それは土曜日、部活も終わり後片付けをしていた時の出来事だった。 「お〜ち〜び〜vv」 英二が飛び切りの特大ハートマーク付きで呼びかけるのを見たリョーマは嫌な予感がして少しだけ後ず去ってしまった。 「なんっすか、先輩?」 リョーマが少しだけ引きつった表情で聞き返すと英二は更に笑みを深くして続けた。 「明日、ヒマ?」 明日は日曜日部活は休み。これと言って用事のなかったリョーマだが英二のあまりの笑顔に『いやヒマじゃないっす』と言いたくなるのを咄嗟に飲み込んで頷いた。 「ヒマなら付き合ってよ。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」 いったい何を付き合えというのかわからないリョーマは無言で立ち竦んだ。 「ねぇ?」 リョーマに拝み手してる英二に背後から桃が声かけた。 「エージ先輩。越前なんて誘わなくても俺ならいつでもオッケーっすよ。」 「喜んで桃先輩に進呈しますよ。」 そう言って通り過ぎようとしたリョーマの手を握り英二は呟いた。 「おちび・・・・・・・大事なことなんだ。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」 更に固まってしまったリョーマに英二は駄目押しのように呟いた。誰がこれを断れようか?たとえ罠だとわかってようと・・・・・・・・・・・・。 「おちびお願い。」 「エージ先輩。それはどういう意味ですか??????」 うしろで騒ぐ桃城を羽交い絞めにして止めた乾はそのまま連れ去ってしまう。 「おちび、付き合ってくれる?」 「・・・・・・・・・・・・・・・わかりました。」 「ありがとう、おちびvv」 このやり取りを遠くから見つめる視線にリョーマはまだ気付いていない。 「ホント先輩たちって怖いっすね。」 桃城は乾からことと次第を羽交い絞めにされながら聞いて青ざめ呟いた。 「そうかな。普通だよ、ね?」 桃城の呟きを聞いて首をかしげ周りに同意を求めた不二に手塚が突っ込みを入れた。 「いや、普通だとは思わないが・・・・・・・・。」 「それに越前くんにはこれくらいしないと・・・・・・。」 不二の瞳が言葉の最後の方見開いていたのは皆・・・・・・見なかったことにした。 「不二って恋敵には本当・・・・・・容赦ないな。」 ため息と共に大石はごくごく小さく呟いた。誰にも聞こえないように・・・・。 「それはさて置きどうやって釣るんですか?」 さっきまで青ざめていた桃城も、今は楽しそうに目を細めて『計画』を聞き出そうとしていた。 「乾が全部お膳立てしたから大丈夫だよ。」 不二がそう言って視線で乾に振ると乾は抜かりないという表情で頷いた。 「俺、少し越前に同情するんですけど・・・・・・・・・・・・。」 桃城は呟かずにはいられなかった。 しかしそう思っているのは何も桃城だけではなく、心中密かに同意をする大石と手塚だった。 約束の日曜日。 ピーンポーーン 「はーい。どちら様?」 ななこさんが玄関口まで出てきてドアをあけた。そこには印象的な瞳をした可愛い系の男の子が大荷物を背負って立っていた。 「おはようございます。おち・・・・・・・・・リョーマ君と同じ学校の菊丸といいます。リョーマ君はいますか?」 英二が大きい声で言うとリョーマがおくから飛び出してきた。 「先輩。行きましょう。」 「うん、おちび。それじゃ失礼します。」 リョーマがすっ飛んできたので英二は慌ててななこさんに挨拶をして玄関を出た。 「行ってらっしゃいリョーマさん。」 「行ってきます。」 「あれっておちびのお姉さん?」 「ななこさんは従兄弟っす。」 「へェ〜ななこさんって言うんだ。不二のお姉さんみたいに綺麗だね。」 「そうっすか?」 「そうだよ。俺の姉ちゃんなんかあんな美人じゃないぞ。」 「先輩はお姉さんいるんっすか?」 「ああ、二人もいるんだ。」 「そういえば5人兄弟でしたっけ?」 「そだよ。皆いるときは騒がしくて煩いよ。」 リョーマは密かに英二の大荷物が気になったが世間話をしながら二人は駅へ向かって歩いた。その後に続く黒い影にはもちろん気付かずに・・・・・・・・・・・・。 「先輩、今日は何の用で呼び出したんっすか?」 今更だがしかし大事なことなのでチラッと英二の大荷物を横目にリョーマは駅に着く前に思い切って尋ねた。 「うんとね・・・・・・・・・・・・・・・・・。言っても帰らないって約束してくれる?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・ことと次第によっては・・・・・・・・。」 英二の物言いに引っかかるものを感じリョーマは探る視線で呟いた。 「じゃあ言わない。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」 「だって帰るかも知れないじゃん。だったらこのまま言わない。」 「言わないなら帰るッス。」 英二のあまりの勿体つけようにいい加減イライラしてきたリョーマはそう言い切って背中を向け帰ろうとした。 「わあああああああ。ちょ、ちょっと待ってよ、おちび。わかったわかった言うから。」 リョーマは仕方なく振り返り英二の言葉を待った。 「笑わないでね・・・・・・・・・・。デートしたかったんだもん。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?」 「だからおちびとデートしたかったの!!」 顔を真っ赤にさせて叫ぶ英二にリョーマの方が恥ずかしくなり思わず顔を反らしてしまった。 「なにいってるんすか?」 「だっておちび本当のこと言ったら付いてきてくれなかったでしょう。」 「そんなことないっす。・・・・・・・・俺も先輩のこと・・・・・・。」 顔を少し赤らめ告白するリョーマに英二はなぜか少し浮かない顔をしていた。 「一緒にって遊園地のしかも・・・・・・・・・先輩いくつっすか?」 「いいじゃん!デートといえば当然遊園地。」 「遊園地はいいっすけどアニマルパークって・・・・・・・・・・・。」 「だって動物好きなんだもん。」 遊園地の動物と触れ合えるコーナーで立ち止まった英二はそこらにいる小さい子よりも大騒ぎしていた。 「だったら遊園地じゃなく動物園にすればいじゃないっすか。それにその大荷物何が入ってるんですか?」 リョーマが兼ねてから気なっていた荷物を指差すと英二に尋ねた。すると英二は・・・。 「今は内緒vvお昼になればわかるよ〜ん。」 つまり弁当か・・・・・・・・・・・全然内緒になってないとリョーマは思いながらそれでも英二が楽しそうならいいかと思い直した。 「なんかフツーに楽しそうですね。」 とてもアニマルパークに不釣合いな集団。乾、桃城、不二が英二とリョーマを見ていた。桃城が羨ましそうに呟く。 「そうだね。」 そう頷く不二の表情に一瞬全員が凍りついた。 「乾。作戦通りなんでしょう?」 にっこり笑って尋ねる不二に乾は無表情で「ああ」と頷いた。 「いっぱい食べてね。」 英二が嬉しそうに言うその目の前にはリョーマの予想通りの二人では食べ切れそうにないほどの料理が並んでいた。 「すごいっすね・・・・・・・・・。全部先輩が作ったんっすか?」 「うん。早起きしておちびのために腕によりをかけて作ったんだから残さないでよ。」 「うっす。」 リョーマが食べるのをウキウキと眺めてる英二に年上ながら可愛いと思ってしまう。リョーマは机越しにいる英二に「いただきます」というと一口、口にした。 「おいしっす。」 「ホント!!おちび。」 嬉しそうににっこり笑う英二。今日一日だけで随分いろんな表情の英二を見たリョーマはどんどん惹かれてく気持ちを止めることが出来なかった。 「うん、今日は上手くいったほうだな。」 自分の料理を食べながらあーだこーだと批評する英二は自分の頬にご飯つぶがついているのに気付いてなかった。 「先輩・・・・・・・・・・。」 言うが早いかリョーマはすっと腕を伸ばし顎に手を当てると自分の唇で英二の頬についてるご飯つぶをとって食べた。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・お、お、お、おちび!!」 声にならない叫びをあげて英二が真っ赤に茹で上がってしまった。顔、耳、首のみならずそれこそ全身真っ赤っ赤に・・・・・・・。 「わあああああああぁぁぁっぁぁなにやってんだ越前!!!!!!!!!!!!」 「桃、煩い。」 怒りのオーラを出す不二に睨まれ桃城は黙り込む。 「乾、これってどういうこと?」 不二に尋ねられ乾は惚けた。 「さぁ、何が?」 「英二と乾が越前を騙してからかうんじゃなかったの?あれはどう見てもただのデートのように見える。」 惚ける乾に問い詰めるように声をひそめて1歩距離を詰めた。 「嘘は言ってないよ。俺は『英二と俺で越前を騙してデートさせる』と言った。からかうなんて一言もいってないけど。」 「僕を騙したの?」 「いや・・・・・・・・・英二の望みを叶えてあげたんだ。」 乾の静かなそれでいて真剣な表情に不二は呟き返した。 「英二の望みって?」 「越前とデートがしたい。」 「どうして乾だって英二が好きなんでしょう?」 「どうして・・・・・・・好きだからこそ英二の笑顔を見たかったのかな。」 「自虐的・・・・・・・・・・。でも僕はこれからも邪魔するよ。」 「いいんじゃないか。俺も協力するのは今日だけだからな。」 「なんだ乾も望み捨ててないんだ。しらけちゃったから帰ろうかな。今日だけ越前にいい思いさせてあげるよ。」 そう言い不二は帰っていった。乾は遠くの二人をそっと見守るように見つめていたが桃城の腕を掴むとそのまま一緒に帰っていった。 その時二人は・・・・・・・・・・・。 「ごめんね。おちび。・・・・・・ううんリョーマ・・・・・・・・。本当は本当に大好きなんだよ。」 鼻の頭を真っ赤にして泣きはらした目で英二は訴えた。どうもこのデートは謀だったらしい・・・・・・・・・・しかしこれではいくらリョーマが怒っていても『泣く子と地頭には勝てない』であろう。 「先輩・・・・・・・・・・・。」 「おちび、俺がしたこと許してくれる?」 涙で潤んだ瞳に言われて無碍に出来る人が100人中果たして何人いるだろう?リョーマには無理だった。 「許すも何も・・・・・・・・いまいち状況がわかんないっすけど・・・・・・・・。」 「おちびこんな俺だけど・・・・まだ俺のこと好き?」 探るように心配そうな視線でリョーマを見つめる英二。 「・・・・・・・・・好きっすよ。」 「じゃあまた誘ってもいい?」 泣いていた英二はまだ潤む瞳で嬉しそうに微笑みリョーマに尋ねた。 「いいっす。・・・・・・・・・先輩、約束の印に・・・・・・。」 リョーマは英二の笑顔に向かって呟きそっと顔を近づけていく二人の影が重なるまでゆっくりと・・・・・・・・・・。 それは二人の誓いの印 終わり |
| すいません。キリリクこんな物でよろしいのでしょうか? 遅くなりましたがこれでも精一杯書かせていただきました。 楽しんでいただければ幸いです。 HANAKO |
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